【マーチングバンド解体新書】公立学校の希望の星となれ「柏市立柏高等学校吹奏楽部」

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回紹介するのは、吹奏楽部の名門校『柏市立柏高等学校吹奏楽部』だ。全日本吹奏楽コンクール27回連続出場、全日本マーチングコンテスト22回連続出場(ともに全日本吹奏楽連盟主催)と素晴らしい実績があり、マーチングバンド関東大会(日本マーチングバンド協会主催)でも年々存在感を増している。日頃の活動や部の様子について、顧問の宮本梨沙(みやもと・りさ)先生からお話を伺った。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

 

柏市立柏高等学校吹奏楽部について

団体正式名称:柏市立柏高等学校吹奏楽部(カシワシリツカシワコウトウガッコウスイソウガクブ)
団体所在地:千葉県柏市
創設年: 1978(昭和53)年
団体の編成:ブラス(※1)、パーカッション(※2)、カラーガード(※3)
木管:Fl、Picc、Cl、Ob、Fg、Sax(Sop、Alto、Tenor、Bariton)
金管:Tp、Hr、Tb、Euph、Tuba
※1 今年度の基本編成はこのとおりだが、マーチング編成では木管からFl、Ob、Fgが抜け、金管はHr→Mello、Tuba→Sousaへ持ち替える。
※2 マーチング活動時のみCymパートが編成される。
※3 マーチング活動時のみで常設パートではない
活動理念:1分1秒を大切に。すぐやる、必ずやる、できるまでやる。

柏市立柏高等学校は1978(昭和53)年に創立された市立高等学校だ。柏市内には千葉県立柏高等学校もあるため、区別の意味もあり「市柏(イチカシ)」の愛称で親しまれている。

吹奏楽部は開校と同時に創部されており、これまでに全日本吹奏楽コンクール27回連続出場(金賞18回受賞)、全日本マーチングコンテスト22回連続出場(グッドサウンド賞6回、金賞11回受賞)日本管楽合奏コンテスト23回出場(6回連続、最優秀グランプリ賞受賞)、全日本高等学校吹奏楽大会in横浜22回出場(優勝、文部科学大臣賞受賞)、全日本高等学校選抜吹奏楽大会in浜松
31回出場(ゴールデン賞・中日新聞社賞受賞)など、他にも挙げきれないほど素晴らしい結果を収め続けている超強豪校である。

マーチング活動は創部10年後の1987(昭和62)年には始まっていたそうで、1987(平成元)年には第24回マーチングバンド関東大会に初出場。以降、毎年M協でも全国大会出場を目指し研鑽を磨いている。

 

他の団体にはない「市立柏ならでは」なエピソード

千葉県内は市立柏の他に習志野市立習志野高等学校や、船橋市立船橋高校など市立高校で吹奏楽の強豪校がひしめいているが、市立柏のみ市が制定した部活動ガイドラインに則った活動を行っている(※2023年7月取材時点)。練習時間の制限が大きいこともあってか、モットーである「1分1秒を大切に」の精神は、顧問や指導者が訴えかけずとも生徒一人ひとりが自然と身につけていくようだ。

宮本:「環境を整え、効率の良い練習方法を模索しながら日々の練習に取り組んでいます。生徒たちは『もっと練習の時間を確保したい!』という思いで隙間時間のやりくりを頑張っています」

 

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.ガイドラインに則り、
・平日3時間
・休日6時間
を原則として活動している

市立柏高校の部活動活動方針について

Q.練習場所はどんな場所?
A.マーチングは基本的に屋外

 

2.メンバーについて

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い

宮本:「市立高校なので柏市内の生徒が多いですが、松戸市、野田市、船橋市、我孫子市、流山市などの千葉県内広域から、埼玉県春日部市、栗橋町から通う生徒もいます」

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.111名

宮本:「このうち吹奏楽コンクールに55名が参加し、パレコンに81名が参加します。座奏とマーチングを兼業するメンバーが半数近くいる状態ですね。M協用のショーにはマーチングメンバーのみ61名で出場します。マーチングでは座奏の一部パート(フルート、オーボエ、ファゴット、弦バス)は参加しないので、カラーガードやバッテリーなどに転向して活動しています」

市立柏はこれまで紹介してきた精華女子高校伊奈学園愛工大名電と同じく吹奏楽の強豪校で、コンクールメンバーとマーチングメンバーが別々に活動している。しかし、今年度は部員数減少のため、上記3校と異なり兼任メンバーが多く、どちらかと言えば活動スタイルは福大大濠に近いのかもしれない。

 

3.実際に加入するためには

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

宮本:「吹奏楽部に入部する生徒は9割9分が楽器経験者ですが、マーチング経験者は2割程度です。1、2年生が主体でマーチングに取り組んでいますが、ほぼ初心者で、練習スタート時には『生まれたての子鹿』のような歩き方をしています」

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円

市立柏の部費は月3千円(年額3万6千円)。入部時のみ、衣装ほか消耗品・備品等の購入費用として3万5千円(初月分の部費を含む)が発生する。コンクールには制服で出場するため衣装は不要で、マーチング用の赤ジャケット・白パンタロン衣装は購入が必要となる。

楽器は無償貸与だが、生徒のほとんどが吹奏楽経験者なので自前楽器の所有率が高いそうだ。カラーガードの手具も学校所有(無償)だが、自宅練習用に自費購入する生徒もいるそうだ。また、大会で県外に行く際には別途遠征費用が発生する(会場や大会規模により変動あり)が、学校や後援会、同窓会、保護者会、柏市などからの補助もありほとんどが5千円~1万円程度とのこと。

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.特になし

 

日頃の活動や今後について聞いてみました

Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・全日本吹奏楽連盟(吹連)主催大会
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・企業イベント
・他の部活動の応援演奏(甲子園など)
・演奏会などの自主公演
・その他(日本管楽合奏コンテスト、全日本高等学校吹奏楽大会

Q.コロナ禍で困ったことは何ですか?
A.
・所属メンバーが減った
・コロナ対策に費用が掛かる
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・練習回数や大会の減少による影響で演奏演技の技術が低下した
・メンバーのモチベーション維持

宮本:「コロナ禍で一番影響があったのは部員数で、コロナ前に比べ半減してしまいました。また、今の2、3年生は中学校で部活をあまりやれずにいたので、活動再開になってからの流れについていけず、残念ながら退部する生徒も数名いました」

コロナ禍での影響も甚大な中、近年の市立柏のM協ショーは進化を遂げている。特にこの2年は、吹奏楽コンクール強豪校ならではの豊かで美しいサウンドに加え、ビジュアルでも魅せるショーに変わっているように感じられた。M協関東大会、特に高等学校の部は全国屈指の激戦区だが、このまま進化を続けたら、近年中に「台風の目」的存在となるのではないだろうか。

また、『部活動ガイドライン』というルールがある状況下で、市立柏が実績を残せば、他の公立小中学校に対しても希望を感じさせてくれるだろう。何かと大変な側面も多いが、市立柏のポテンシャルを思えば可能性は大いに感じられる。これからも応援していきたい団体だ。

柏市立柏高等学校吹奏楽部

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