【マーチングバンド解体新書】学び育て奏で合う「とみやマーチングエコーズ」

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する企画、【マーチングバンド解体新書】シリーズ。今回は東北地区で活動する『とみやマーチングエコーズ』について取り上げたい。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

とみやマーチングエコーズについて

団体正式名称:とみやマーチングエコーズ(トミヤマーチングエコーズ)
団体所在地:宮城県富谷市
創設年:1990年
団体の編成:ブラス、バッテリー、フロントピット、カラーガード
創設目的:音楽をとおしたまちづくり・青少年の健全育成
活動理念:教育活動の1つとしてのマーチング

団長を務める梅津麻弥(うめつ・まや)さんによると、結成当初はファミリーバンドとして活動開始したという。

梅津:「富谷市は人口5万人超のベッドタウンで、子育て世代が多く住む市です。市内には8つの小学校があり、その全てにスクールバンドがあります。エコーズは当初ファミリーバンドとして創設されたのですが、結成から5年目くらいの頃にメンバーが大幅に減ってしまい、そこからコンテストバンドへと方向転換しました。
現在の活動の柱は、全国大会出場を目指してのショーの練習と、3月に行う自主公演の演奏会の練習の2つです。また、市のイベントなどにも随時出演しています」

他の団体にはない「エコーズならでは」なエピソード

梅津:「エコーズは、ずっと同じパートに所属できるという確約はありません。例年、退団・入団の入れ替わりは40名程度発生しますが、そのたびにパートを再編成しています。まずはパートリーダーを決め、技術や年齢……メンバーは中高生の学生が最多のため受験生が固まらないようにして、年度の始まりからGWくらいまでは仮パート期間として適正などを見ます。その後、6月以降に正式に決定となります」

エコーズは6月中に『結団式』を行い、正式パートの通告やパートリーダーによる「所信表明」などを行うという。また、結団式までに今年度のショーが決まっていれば発表されるそうだ。例年、大会用プログラムへの取り掛かりは6月以降とやや遅いスケジュールだ。

パートの再編といえば、トランペットからメロフォン、バリトンからユーフォニウムなどはよくある話だが、エコーズの場合はドラムからブラス、ブラスからガードなどセクションも転向する。希望通りのパートに選ばれず拗ねたり、辞めてしまったりということはないのだろうか?

梅津:「それはありません。まず、入団時にバンド全体の編成について説明し、承諾した上での入団となっています。それにメンバーはみんなとっても素直な子たちばかりで、『バンドのために自分はどうすべきか』ということを自分たちでちゃんと考えてくれているんですよ」

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週2回(土日両方、平日+土日どちらかなど)

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内

2.メンバーについて
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.100名以上

Q.メンバーの平均年齢はどれくらい?
A.16~18歳

Q.新規加入は例年何名くらいいますか?
A.30~40名

Q.脱退(シーズン途中を含む)は例年何名くらいいますか?
A.30~40名

Q.所属メンバーの居住地について教えて下さい
A.団体所在地「内」の都道府県から通っている

梅津:「エコーズには小学4年生から社会人までの幅広い年齢層が在籍しています。10歳から40歳までが一緒にプレーする団体です。最も多い年齢層は中・高校生で、全体の8割強を占めています。そのため、テスト期間は参加率を考慮してスケジュール調整を行います」

なお、2020年度の所属メンバーは136名で、うち116名が女性で男性が20名。圧倒的女性比率だが、これは富谷市内のスクールバンドでの女児の参加率が高いことが影響している。富谷市内はもちろん宮城県内から参加し、関東や関西から通うメンバーもいたそうだ。

梅津:「コロナ禍においては、体温が37.3℃以上ある場合は練習への出席不可とし、緊急事態宣言中は遠方からの参加メンバーに出席自粛をお願いするなどの団内で独自ルールを設け、社会情勢や感染拡大状況を鑑みながら活動を継続しました」

3.実際に加入するためには
Q.年齢制限はありますか?
A.小学4年生以上〜社会人(体力が続くまで)

Q.加入に際しオーディションを行っていますか?
A.入団の際のオーディションは行わないが、パートを決定するためのテクニカルチェックを実施している

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円程度

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.年度途中での退団は認めない。

とみやマーチングエコーズ(以下エコーズ)は、富谷市社会教育団体として活動しており、事務局は富谷市教育委員会生涯学習課(富谷市スポーツセンター)に設置されている。国内であまり例を見ない団体だ。

梅津:「エコーズは社会教育団体ということから、小・中・高校生の思春期の子どもたちへ活動を通じて礼儀や生活態度、マーチングの練習により忍耐力を学ぶ場として活動しています。団体に関わる大人はよき手本として子どもたちの成長を手助けし、大人メンバーにおいてはマーチの幅が広がり、他団体にはないショーを作り上げることができます。メンバー間は非常に仲が良いと思います。

富谷市の教育団体ということから市から運営に対する補助を受けていますが、市だけでなく様々な方の協力を頂いて運営しています。OB・OGメンバーや現役メンバーの保護者の方にボランティアでサポートスタッフをやっていただいているんです。ちなみに保護者の協力は必須ではなく、ご協力可能な方にのみお願いしています。内容としては未成年メンバーの練習場所への送迎、衣装や小道具の作成などですね」

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.2020年はどのような活動を行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.2021年度の活動はどのように行う予定ですか?
A.練習を行い、大会にも参加予定(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.2020年度の大会参加状況について教えて下さい
A.予定どおり出場した

Q.2021年度の大会参加予定について教えて下さい
A.可能な限り参加予定

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・所属メンバーの減少
・練習場所の確保
・スケジュールが立てられない
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった
・練習回数や大会の減少による影響で演奏演技の技術が低下した

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.メンバーや団関係者のメンタル(生き甲斐)の維持。30年間築いてきたバンドの維持。

全国大会の常連団体として名を連ね、毎年スーパーアリーナで素晴らしいショーを披露してくれるエコーズだが、独自の人事異動システムメンバーの年齢層活動スケジュールなど、梅津さんの話を聞けば聞くほど驚きの連続だった。
幅広い年齢層が所属する団体というのは、子どもにとって様々な良い影響がある。例えば練習でのことから友達や家族のことや、進路のことなど……親や学校の先生以外の身近で話せる大人がいるのはとてもよい環境なのではないだろうか。

先日、2021年度の大会情報が発表されたが、今年のエコーズはどのようなショーを披露してくれるのだろうか。非常に楽しみな団体である。

 

「とみやマーチングエコーズ」

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