【マーチングバンド解体新書】永久保存版!「天理教愛町吹奏楽団」を徹底解説

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回紹介するのは『天理教愛町吹奏楽団』だ。国内外で活躍する超有名バンドであり、母体が宗教団体ということから「自分とは遠い存在」のように感じる人もいるかもしれないが、実は開放的で親しみやすい団体だ。今回はエグゼクティブディレクターの関根清和(せきね・きよかず)氏の監修の下、団体の歩みや活動状況などをお伝えしていきたい。

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天理教愛町分教会吹奏楽団について

団体正式名称:天理教愛町分教会吹奏楽団(テンリキョウアイマチブンキョウカイスイソウガクダン)
団体所在地:愛知県半田市
創設年:1962年
団体の編成:ブラス、バッテリー、フロントピット、カラーガード
※普段ブラスは金管(Tp,Mello,Trb,Euph,Tuba)のみだが、WGI(Winter  Guard International)の編成では木管(Fl,Cl,Sax,弦)も加わる
活動理念:団員相互の友情を高め、マーチングバンド・カラーガードの普及発展と新しいショー創り

天理教愛町吹奏楽団、通称『愛町マーチングバンド』は、創立者である関根清和氏を含む4人のメンバーから始動した。1962年(昭和37年)に天理教愛町分教会の青年部部長に就任した関根氏が教会内の若い人たちの集いの場として空手や合唱などいくつものクラブ活動を創立したのだが、その中の一つに「メリーヤングマンバンド」というジャズやポップスミュージックを演奏するバンドがあり、後にマーチングバンドとして活動するようになった。

大会には1973年(昭和48年)開催の『第1回マーチングバンド全国大会』から出場しており、これまでに11回内閣総理大臣賞(グランプリ)を受賞している。1996年(平成8年)よりアメリカで開催されるWGIにも出場し、近年は高得点の成績も収めており、ブラス、ドラム、カラーガード全セクションで合計7個のメダルを獲得するなど高い評価を得ている。
また、現在までに70名ほどのメンバーがDCIに挑戦し、多くの経験を団体に持ち帰っているのも特徴の一つだ。

多くの実績や経験を活かし、クリニックを開催したり、全国の学校や一般団体への指導を行うことで、これまでに培った技術やノウハウを包み隠さず伝えることでマーチング・カラーガードの普及発展に貢献している。

また、DCI(Drum Corps International)で活躍する外国人スタッフを招聘し、彼らの豊富な知見を生かして常に新しいスタイルを用いたショー創りを行っている(外国人スタッフの愛町での指導歴の長さにも注目したい)。

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他の団体にはない「愛町マーチングバンドならでは」なエピソード

愛町マーチングバンドと言えば、テーマに合わせた斬新な衣装やプロップも毎年大会で注目を集めているが、これらは基本的に手作りであることをご存知だろうか。

かつては日本武道館のフロアに実物大のヘリコプターを登場させたり(第25回記念全国大会『MISS SAIGON』)、空高くバルーンを飛ばしたこともあったが(第27回全国大会『AFRICA』)、これらの舞台装置もお手製だ。

メンバーやその家族、サポートスタッフなどがクリエイターの意図を汲み取り、衣装などを一つ一つ作成している。

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週3日以上
※基本的には月・金曜以外に練習を実施。コロナ禍では平日1日+土日と頻度を下げて活動した。

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
平成9年に建てられた専用の練習場「愛町修練場」があり、 全員で練習を行うことができるフロアの他、各パート毎の練習部屋がある。この修練場は愛知県マーチングバンド協会主催のクリニックの会場として使用された事もある。

2.メンバーについて

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い。以前は関東や関西、北陸などからも通うメンバーもいたが、現在はコロナ禍ということもあり、愛知県民のみが参加している(2022年4月取材時点)

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.100名以上
2021年度は100名が参加。コロナ以前は130〜140名で活動していた。

Q.メンバーの平均年齢はどれくらい?
A.25~28歳

Q.所属メンバーの中で「一番多い」属性はどれですか?
A.大学生、社会人が同じくらいの割合で多い

Q.新規加入者は例年何名くらいいますか?
A.10~20名

Q.退団者(シーズン途中を含む)は例年何名くらいいますか?
A.10~20名

3.実際に加入するためには

Q.年齢制限はありますか?
A.なし
以前は小学生も活動していたというが、現在は中学生から40代までが所属し、親子参加メンバーが6〜7世帯いるとのこと。

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.状況に応じて行なっている(パートや応募状況など)
定員に達した場合のみオーディションを実施することがあるそうだが、初心者・未経験者 も歓迎とのこと。世界トップレベルを誇るパーカッションやカラーガードであっても加入可能だ。

但し、大会用プログラムは相応のレベルのものをこなさなくてはならないため、人によっては加入直後は大会メンバーになれない場合もある。その場合は「翌シーズン以降は大会メンバーになれるように責任を持って指導します」とのことだった。

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.2〜3万円

愛町マーチングバンドの活動費用は上記の表の通りで、おそらく「日本一費用がかからない一般団体」なのではないだろうか。

メンバーの金銭的負担が非常に少ない点としては、
・専用の練習場所を有している(体育館の利用代が一切掛からない)
・パートナーシップ会社によるエキップメント全般の提供
が挙げられる。

パートナーシップ会社は全部で9社(※)あり、楽器や衣装、シューズ、プロップなど、ショーに関わるほぼ全てのものが提供されている。愛町マーチングバンドの活動実績を高く評価した各メーカー側から「DCIトップコー同様の待遇で提供を行いたい」と申し出があったため実現している。そのため、シューズを含む衣装代、楽器代(借用費)、ドラムのヘッドやスティック・マレットなどの消耗品も負担しない。
活動状況にもよるが、負担が必要なものはブラスメンバーの練習用手袋やバルブオイル程度。その他は各自の交通費や食事代くらいだ。

※パートナーシップ企業一覧
Dynasty、Innovative Percussion、Istanbul Agop、EVANS、Field and Floor FX、BAND INSTRUMENT、Director’s Showcase International(DSI®)、UDB、Cherry Forcus Co.,Ltd.

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.
・練習の参加率が著しく低くなる方に関しては応相談
・母体が天理教の団体だが、天理教の信者でなくても入団可能

愛町マーチングバンドを外から見て「気になる」点は、母体が宗教団体であるということだろう。これについて団体は「本人さえよければぜひどうぞ」というウェルカムな姿勢を一貫している。また、信仰対象が他にある方であってもお断りすることはないという。
なお、現在は信者ではないメンバーも半数近く在籍しており、天理教の信仰を強制することはないとのこと。

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行う予定ですか?
A.練習を行い、大会にも参加予定(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

実は2020年春のWGIにも参加予定だったが、ショーが出来たタイミングで新型コロナウイルス感染拡大の影響から大会が中止になり、止むを得ず参加を断念したという。今後については「社会情勢にもよるが、状況が落ち着いたらWGIにも再度挑戦したい」とのことだった。

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・練習回数や大会の減少による影響で演奏演技の技術が低下した
・メンバーのモチベーション維持

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.以下、愛町スタッフよりコメント
「世の中はコロナの影響により、吹奏楽やマーチングの練習や本番が次々と中止になり、各組織の活動自体が減衰しています。『やりがい』を失ったメンバーたちも多く見受けられ、活動が続けられなくなる団体やメンバーも沢山いたと思います。
そんな時だからこそ、音楽やマーチングを通して、改めて『仲間』同士で助け合って、共に喜びを分かち合い、絆を深められる場所があることが大切だと感じています。
そして、演奏や演技を通して、一人でも多くの観客に感動や勇気を与えられるよう、日々練習に取り組んでいます。
一日も早くコロナが収束して、応援してくださるファンの皆様と、マスクを外して大きな声で楽しく笑って過ごせる日が来ることを、メンバー一同心より願っております。今後とも応援よろしくお願いいたします!」

国内にいながら世界トップレベルの作品を演奏できたり、指導を受けられるということは非常に貴重な機会である。それでいて金銭的な負担は少ないので、将来DCIやWGIを目指す若きプレーヤーにとっては経験を積む絶好の場だ。

ちなみに、入団時期については特に締切を設けておらず、シーズン中の加入も可能とのこと。所属団体が決まらずに来年の春の募集再開まで1シーズン待つのも良いが、途中加入OKの団体で活動するというのもプレーヤーにとって良い選択肢となるだろう。

また、2022年5月29日㈰には半田市で無料のファミリーコンサートを行うとのこと。近郊の方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

>コンサート詳細はこちら

「天理教愛町分教会吹奏楽団」

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