【マーチングバンド解体新書】マーチングを通じ社会に出ても通用する人材育成を行う「IPU・環太平洋大学マーチングバンド部」

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回は岡山県を本拠地に活動する『IPU・環太平洋大学マーチングバンド部』を紹介したい。2022年の春のセンバツ(第94回選抜高校野球大会)では、クラーク記念国際高等学校の応援演奏がSNSでバズり、マーチングファンのみならず野球ファンからも絶賛されたことは記憶に新しい。

そんなIPUの活動内容や部の様子について、監督を務める中家淳悟(なかいえ・じゅんご)先生にお話を伺った。

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IPU・環太平洋大学マーチングバンド部について

団体正式名称:IPU・環太平洋大学マーチングバンド部(アイピーユー・カンタイヘイヨウダイガクマーチングバンド)
団体所在地:岡山県岡山市 ※IPU・環太平洋大学内
創設年:2010年
団体の編成:ブラス(金管)、パーカッション、カラーガード
活動理念:部活をやりたいなら授業をきちんと受ける、など学生としてあるべき姿を部則で定めています

IPU・環太平洋大学マーチングバンド部(以下、IPU)は2010年に12名の部員で創部された。大学関係者が参加した北京五輪(2008年)の開会式のセレモニーでマーチングバンドを目にし、「母校にもこのような活動があったら」という提案があったことがきっかけとなった。

中家:「マーチングバンドは吹奏楽部内の活動の一環として行われることが多いことから『文化部』に分類されることがほとんどですが、本学のマーチングバンド部は『体育会系運動部』です。創部当初から吹奏楽(座奏)は行わずマーチング一択でやると決めていました。部員の9割近くがマーチングバンド部での活動を志しての入学ですが、学校生活あっての部活動ですので、当然ながら授業をしっかり受けた上での練習参加となります」

他の団体にはない「IPUならでは」なエピソード

IPUでは学業を疎かにしない(授業の出席率が85%を下回ったら退部)ことは大前提として、マーチングをしながら社会人になるための予行演習ができる。その一つが「年休制度」だ。

中家:「部則の一つに『年休制度』というものがあります。年度内(4⽉1⽇〜翌年3⽉31⽇まで)に合計10⽇間の休暇を部員全員に与える制度で、部活を休む際には届出を申請することになっています。年休の範囲を超えて⽋席した学⽣はそれ以降の本番には⼀切出演させません」

これは企業における「有給休暇」と同じようなもので、規定の日数内であれば事由や時期に関わらず休暇を取得することができるとのこと。(3年生以上には年休の他に進路休暇も年間20日与えられており、インターンシップや企業説明会に積極的に参加できるような制度も設けられている)
ただし日数は限られているため、体調管理はもちろん、自身のスケジュールを計画的に遂行する力も必要だ。そのあたりの「見極め」は一朝一夕で身につくものではなく、社会人になった瞬間に取得できる能力でもない。厳しいルールのように見えるかもしれないが、社会に出てから困ることがないよう、学生のうちから学べるのは非常に有意義な経験である。

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週3日以上
通常は月、火、木、金、土曜(水・日曜はオフ)
※平日は通常5限終了後の18時~20時、休講期間は13時~20時
※大会前は変動あり

中家:「これらはすべて全体練習の時間であって、個人練習は含みません。練習時の最小単位はパートでの活動です。個人練習は授業の空き時間などを使って各自で行います。練習計画はすべて学生たちが考えて行っているので、学生のスタンスに大人が合わせています」

IPUでは毎年4月に年度目標を決めており、達成に向け逆算してスケジュールを立てている。目標は漠然と大きな夢を語らず、「現実的に達成可能な範囲のもの」とする点にもこだわりがある。また、前期は4年生が就職活動のため練習に参加する機会が少なく、1〜3年生主体での活動となる。

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内

キャンパス紹介|IPU・環太平洋大学

2.メンバーについて

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い

中家:「北は北海道から南は沖縄まで全国各地から学生が集まっています。在学中の住居について、大学近くで一人暮らしがほとんどですが、実家(岡山県内)から通学する学生や、友人やきょうだいとシェア住まいの学生もいます。学生寮もありますが、利用者は1割程度です」

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.100名以上(2022年度は125名)

Q.新規加入者は例年何名くらいいますか?
A.30~40名

3.実際に加入するためには

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.入部の条件は設けていないが希望パートは毎年4月にオーディションを行い決定している。初心者大歓迎

中家:「IPUでは3〜4年前からサブメンバー(補欠)制度を導入しました。4月に実施する全員オーディションの結果でショーメンバーを決定し、サブメンバーはパレードやイベントなどの大会用ショー以外の本番には出演する他、『年休制度』で大会本番を欠場するメンバーがいた場合、サブメンバーが代理で出場します。例年出場しているマーチング・イン・オカヤマは教育実習の時期と重なるため欠員が出やすいため、ここでもサブメンバーの出番です。サブメンバーがいることによって、大会用ショーに穴を空けることがなくなり、常にフルメンバーで出場できるようになりました」

なお、4月の全員オーディションで選出されたからといって、通年で固定起用されるわけではないという。シーズン中に実力を付けたサブメンバーが下剋上することも有り得るそうだ。サブメンバーは二軍扱いではなく、常にベンチでモチベーション高く待機している。ショーメンバーも慢心しているとスタメン落ちしてしまう可能性があるため、研鑽を怠らないようにしなくてはならない。

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.16~20万円

IPUの年間活動費は一人当たり約17万円程度(活動状況に応じて変動あり)とのこと。
内訳は主に部費12万円(年額)と衣装代1万円(年額、学校備品の貸与)と、ショーや定期演奏会の構成によって集金があるとのこと。
※初年度はチームジャンパーやTシャツ等を購入するため、別途5万円程度費用が発生する

楽器は学校貸与(メーカー統一のため自前楽器の使用は不可)、消耗品の類もショーに必要なものであれば提供してもらえるとのこと。

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.部則の遵守。授業出席率85%以上でないと退部などの条件を定めています

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行う予定ですか?
A.練習を行い、大会にも参加予定(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・所属メンバーが減った
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・メンバーのモチベーション維持

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.

中家:「コロナ禍の影響で『できなくなった』ことは多くありましたが、そこに目を向けるより『できることを考える』ことを考えて行動することの方が大切だと思います。我々も定期演奏会の配信を行ったり、新しい試みにも挑戦しました」

IPUは「学校の部活動」のため、一般バンドと比べると部則などが厳しく感じられるかもしれないが、在学中は多くの仲間と切磋琢磨しながら多くのことを学べることだろう。また、冒頭でも触れたように野球応援やイベント出演など、大会だけでなく多くの演奏機会があり、充実した大学生活を送ることができるのではないだろうか。

今シーズン、大会やイベントなどでIPUのパフォーマンスを目にする機会があるはずだ。コロナ禍でも学業とマーチングに全力で取り組む姿に、きっと元気をもらえるだろう。SNSも活発に更新しているので、活動状況も要チェックだ。

「IPU・環太平洋大学マーチングバンド部」

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