日本マーチングバンド協会 田中久仁明理事長インタビュー

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、これまで当たり前にやってきた練習や活動、その成果を発表する機会も奪われた年となった。そんな状況下で、日本マーチングバンド協会は動画を使用した形式で全国大会を開催することを決定した。

今回は田中久仁明(たなか・くにあき)理事長に、全国大会への想いや開催についての経緯など、直接お話を伺った。

※撮影時のみマスクを外していただきました

JMBA日本マーチングバンド協会(以下、M協)とは、『全日本マーチングバンド・バトントワリング連盟』と『日本マーチングバンド指導者協会』が統合し、『日本マーチングバンド・バトントワーリング協会』と名称を定め、新組織として2005年(平成17年)に発足したものである(※1)その後、2013年(平成25年)に現在の『一般社団法人日本マーチングバンド協会』名称を変更した。

※1 『全日本マーチングバンド・バトントワリング連盟』の母体は、1967年(昭和42年)創設の『日本パレードバンドアソシエイション』。『日本マーチングバンド指導者協会』は1971年(昭和46年)創設。

現在M協が行っている主な活動には、大会の開催や指導者育成などがあり、中でも最も有名なものは毎年12月にさいたまスーパーアリーナ(以下、SSA)で開催される『マーチングバンド全国大会』だろう。M協加盟団体に所属した者であれば、誰もが一度は銀色のフロアのSSAを――古くは日本武道館での演奏演技を目指したことがあるのではないだろうか。

2019年に第47回を迎えた歴史ある大会で、2020年は『第48回マーチングバンド全国大会~e-Marching Special Edition 2020~』として開催が予定されている。

 

 

2020年度の全国大会について伺った。

田中理事長(以下、田中):「基本僕は全国大会を中止するという考えはなかったです。各団体の現場は、大会などの具体的な目標がないと動けませんから。しかし、コロナ禍で動く・活動するということについての判断は非常に難しい点で……2月にマーチングステージ全国大会を開催したときにも、いくつも投書が届きました。ちょうど感染拡大の報道が出始めたころで、大会当日にも『こんな時に大会をやるなんて』とお叱りの声もありました」

さいたまスーパーアリーナのイメージ写真:写真AC

田中:「僕は、止めることは簡単だと思っています。2月からのこの9ヶ月間は、全国大会をやる前提で話し合いを重ねてきました。今度の全国大会が果たして最良の環境でのものか? 現時点では判断が非常に難しいです。ただ、今出来得る方法として新たな方向性を見出せたのは事実です」

※撮影時のみマスクを外していただきました

田中:「門扉を開いておけば何かしら動くことはできますが、閉ざしてしまえばそれまでなんです。ここまで来るのに気持ちが折れなかったわけではありませんし、何度も『やっぱり止めたほうがいいのか』と考えたこともあります。他のイベントや大会が続々と中止を発表する中で動揺はありましたが、逆に『じゃあうちは尚更やめたらいけない』と思わさせられる一面もありました」

 

初出場団体が続々と コロナ禍で行う新しい形式の全国大会に見えた傾向

2021年1月開催予定の全国大会については、111団体の枠に対し107団体の出場が決まっている(2020年12月上旬現在)。例年であれば全国大会出場団体の9割近くが『お馴染み』の団体だが、田中理事長によると2020年に出場する全107団体のうち2~3割が新しい顔ぶれに変わったという。

コロナ禍において活動自体を自粛・休止した団体が多数あった影響とも考えられるが、見方を変えたらある種ポジティブな状況と捉えてもいいはずだ。本来の状況であれば地方大会で予選落ちしていた団体が「例年と違った形式の開催であっても全国大会に出場する機会を得た」という事実には変わりない。

田中:「(出場団体について)個人的には7割程度のエントリーだろうと思っていましたが、想像以上に多かったですね。また、届いた映像にも驚きました。今年は活動の制限もあったので、もうちょっとラフな大会になるかと思いきや、例年に負けず劣らずどこもみんな本気の作品だったんです。

いつもとは違う形式の全国大会にはなりましたが、最後の年となった三年生にとっては『本気になれるもの』が一つでもあったと思ってもらえたら嬉しいです。そういう意味では大会を止めなくてよかったと思います」

田中理事長いわくM協の使命は「マーチングバンドの普及と発展」というが、2020年度の全国大会に新しい顔ぶれが登場するということは、このような状況下でも大会を中止しなかったからこそ生まれた新展開である。今回の大会開催については、夏の甲子園が早々に中止を決定した時のように、どの選択肢に進んでも賛否両論に分かれるだろう。ただ、止めてしまえばそれまでだ。

苦難を乗り越えて全国大会出場を決めた団体には、素直に称賛を送りたい。もちろん、勇気ある撤退・休止を選んだ団体にも光が当たるよう願っている。そして、M協が歩みを止めなかったことが今後の日本のマーチング界の普及と発展につながると期待したい。

※取材日は2020年11月下旬

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