【マーチングバンド解体新書】生徒が最大限輝ける場所を生み出した「野田市立南部中学校吹奏楽部」&「南部Smile☆Revolution」

写真提供:フォトクリエイト

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する企画、【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回は、学校部活動の『野田市立南部中学校吹奏楽部』と、クラブチームとして活動する『南部Smile☆Revolution』を共に紹介したい。二つの団体について、指導者の金子孝澄(かねこ・たかすみ)先生からお話を伺った。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

野田市立南部中学校吹奏楽部と南部 Smile☆Revolutionについて

団体正式名称:野田市立南部中学校吹奏楽部(ノダシリツナンブチュウガッコウスイソウガクブ)、南部Smile☆Revolution(ナンブスマイルレボリューション)
団体所在地:千葉県野田市
創設年:2020年(南部Smile☆Revolution)
団体の編成:金管、木管(活動形態によって異なる。詳細は後述)、バッテリー、フロントピット、カラーガード
活動理念:いつも明るく、いつも元気に、一生懸命

野田市立南部中学校吹奏楽部は1996(平成8)年からマーチングを始め、以降吹連・M協両方の大会参加だけでなく、地域イベント出演や演奏会の開催など精力的に活動していた。しかし、文化庁が2018(平成30)年12月に策定した『文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』によって事態は一変する。

金子:「ガイドラインを遵守するとなると、練習時間の都合などから活動内容の取捨選択をしなくてはなりません。生徒たちの意欲を摘まず活動機会を守り続けたいという想いから、学校側と協議し、クラブチームである『南部Smile☆Revolution』発足に至りました」

現在、全日本吹奏楽連盟(吹連)主催のコンクールとマーチングコンテストのエントリー時と演奏会は『野田市立南部中学校吹奏楽部』、日本マーチング協会(M協)やJAPANCUPへのエントリー時は『南部Smile☆Revolution』として活動している。発足経緯は異なるが、活動形式としては綾北”Mercury winds”が近い例だろう。

他の団体にはない「野田南部&Smile☆Revolutionならでは」なエピソード

野田南部&Smile☆Revolutionは、吹連パレコン・M協両方の全国大会で金賞を受賞している全国屈指の実力校である。これまで当サイトでも吹連とM協の二刀流団体として福岡大学附属大濠高等学校吹奏楽部東京農業大学第二高等学校吹奏楽部 EMERALD KNIGHTSを紹介してきたが、いずれも高校だ。中学校で全国W金賞を獲るわけだからどれだけ厳しいのだろうか……と思いきや、生徒たちは至って楽しく練習に励んでいるそうだ。

金子:「コロナ禍以前はイベントにも多数出演していて、地域交流の良い機会となっていました。私たちの演奏を見た大人はもちろん、小学生たちが『すごく楽しそう!』と感じてくれ、進学後に入部してくれる子がたくさんいたんです。もちろん、今の部員たちもみんな楽しそうにやっていますよ。私たちの演奏を見てもらえればわかっていただけると自負しています」

関係者が答えます! 活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.吹奏楽は部活動の範囲(※)で、Smile☆Revolutionは年20回の活動

※部活動は平日、野田市の教育方針に則り活動している。クラブチームは年度初めに定めたスケジュールで練習を実施している。

金子:「活動時間が非常に限られているだけでなく、コロナ禍で更に練習時間が短くなっているので、生徒たちに課題を出してクリアしてもらうなど工夫して行っています」

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内

2.メンバーについて

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.81~90名

Q.メンバーの平均年齢はどれくらい?
A.13~15歳

Q.新規加入は例年何名くらいいますか?
A.20~30名

Q.退団者(シーズン途中を含む)は例年何名くらいいますか?
A.~10名

Q.所属メンバーの居住地について教えて下さい
A.団体所在地「内」の都道府県から通っている

金子:「2021年度は吹奏楽部が87名、クラブチームが82名でした。クラブチーム内には野田南部中ではない他校の生徒も所属しています。現在はメンバー全員野田市内の中学生ですが、他の市区町村から加入を希望する生徒が現れれば考えたいと思います」

3.実際に加入するためには

Q.年齢制限はありますか?
A.中学生のみ

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

金子:「実績を見て尻込みしてしまう生徒もいますが、初心者大歓迎です!」

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円

活動費用について、編成人数やショーの内容、大会参加状況によって変動するため総額は年度ごとに異なるが、一人あたりの負担額はおおよそ2万5千円程度とのこと。

衣装のジャケットは無償貸与、ズボンは購入(1万1千円)。合宿は行わず、大会遠征費は都度払い(1大会あたり4〜5千円前後)だそうだ。

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.演奏形態に応じてパートのコンバートがあることを了承の上参加できること

金子:「吹連の大会とM協の大会で一部パート編成を変えることがあるので、その点を承知の上で入部してもらいたいですね。特に木管楽器や打楽器はそういったことが多々あります。でも意外とコンバート先のパートで楽しそうにやってるんですよ、不思議なものですね。あとは時間と回数が限られているので、練習に参加できることは必須条件です」

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.2020年はどのような活動を行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.2020年度の大会参加状況について教えて下さい
A.予定どおり出場した

Q.2021年度の活動はどのように行う予定ですか?
A.練習を行い、大会にも参加予定(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.2021年度の大会参加予定について教えて下さい
A.可能な限り参加予定

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・練習場所が確保できない
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・練習回数や大会の減少による影響で演奏演技の技術が低下した
・メンバーのモチベーション維持

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.活動を続けたいという生徒のために、練習時間や場所の確保は必要だと考えます。どんな環境であっても、活動が可能な限り生徒のために動いていきたいです。

今回紹介した野田南部&南部Smile☆Revolutionは、「生徒の活動機会を失わないため」という目的でクラブチームを発足させたが、一昔前であればあまりなかったケースだろう。しかし、文化庁のガイドラインや外部指導者への移行に加え、少子化、コロナ禍で拍車がかかった吹奏楽人口減少などをきっかけに、部活動からクラブチームとして活動していく学校がでてくることが予想される。

いち早く新たな方針に切り替え、素晴らしい実績を出している団体として、これからも彼らの活動に注目していきたい。

 

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