【マーチングバンド解体新書】楽しむことで強くなる!絆が光る「愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部」

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回紹介するのは、強豪校として知られる愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部だ。古くから吹奏楽界で活躍し、多くのファンを持つ学校団体なだけに日頃の活動に興味を持っている人も多いことだろう。本連載も3年目を迎え、これまで小学生バンドから一般楽団まで30団体を特集してきたが、愛工大名電はどの団体とも異なる個性があり、非常に魅力的だった。

現在吹奏楽部は主顧問で指揮者の伊藤宏樹先生、鈴木裕子先生、小林知広先生、梶山宇一先生、遠山翔大先生、加藤寛人先生の6名体制で運営をしているが、今回は20年以上マーチングを担当している梶山宇一(かじやま・ういち)先生からお話を伺った。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

 

愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部について

団体正式名称:愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部(アイチコウギョウダイガクメイデンコウトウガッコウ スイソウガクブ)
団体所在地:愛知県名古屋市千種区
創設年:1955(昭和30)年
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション
※編成詳細は以下の通り
木管:Fl、Picc、Cl(B♭管、Bass Cl)、Sax(Sop、Alto、Tenor、Bariton)
金管:Tp、Hr、Tb、Euph、Sousa
活動理念:モットーは「みんなで支えあい、一生の絆を築く」

愛工大名電高校は1912(明治45)年に創立された私立の共学高校で、イチローなど多くのプロ野球選手を輩出している名門野球部を始め、卓球部などのスポーツが盛んな学校である。

吹奏楽部は1955(昭和30)年に創部され、2023年で創部68年目を迎えた。全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟主催)の最多出場校という輝かしい記録を持つ強豪校として知られている。

梶山:「『甲子園の応援には必ず吹奏楽部が応援』という時代に創部され、現在は部員約200名が在籍しています。マーチングの大会に出場し始めたのは、故・松井郁雄先生が顧問を務められていた時でした。以前は日本マーチングバンド協会の大会にも出場していましたが、現在は全日本吹奏楽連盟のマーチングコンテストのみ出場しています」

 

他の団体にはない「愛工大名電ならでは」なエピソード

梶山:「入部してからの担当パート決めは、基本的に『やりたいパート』をやってもらっています。マーチングに関しては、大会での人数の定めはありますが、部内でのスポット数は限定していません。そのため、年によって編成が異なることもしばしばあります。大会結果より楽しくやることを大切にしていて、生徒たちの絆は強く、団結力があります。それもあってか、3年間を通じて途中退部する部員の数は本当にごく僅かです」

吹奏楽の強豪校として知られる愛工大名電なので、ハードなイメージを持っていたが、実際には180度真逆で、実力を磨きながら楽しく活動しているようだった。また、ライバル校との関係性も非常に良好なのも印象的だ。

梶山:「全日本吹奏楽コンクールの会場がセンチュリーホール(名古屋国際会議場)になったこともあり、全国の吹奏楽部が名古屋にやってくるようになりました。地元校である我々との交流が生まれ、演奏会のゲスト出演に呼んだり呼ばれたり、ジョイントコンサートを行ったりするようになりました。団体によってサウンドの作りが違っていて、大変興味深く、大きな刺激となっています」

弊サイトでも以前紹介した精華女子高等学校京都橘高等学校はもちろん、習志野市立習志野高等学校、東海大学付属高輪台高等学校などとも親交があるそうだ。

 

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.平日全て(授業終了後)

梶山:「基本的にシーズン中は毎日練習をしています。オフシーズンは、月1回か週1回は練習をお休みにしています」

なお例年の年間スケジュールとしては、
・~5月までは全体活動
・6~12月くらいまで座奏とマーチングのメンバーに分かれて活動(7月のサマーコンサートは全体で)
・1月~全体活動(1月の定期演奏会では座奏とステージドリルで別々の演目を披露)
といった流れだそうだ。

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内


隣接する名電中学校の敷地内に淳和記念館という5階建ての建物があり、中にはホールやパート練習室が設けられていて、吹奏楽部の活動拠点となっている。

 

2.メンバーについて

写真提供:フォトクリエイト

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い

名古屋市はもちろん愛知県や、岐阜県、三重県などの東海近隣の都道府県からも通う生徒がいるとのこと。

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.206名

名電中学校の生徒も所属しているが、5名程度で、部員のほとんどは高校生が占めている。

 

3.実際に加入するためには

写真提供:フォトクリエイト

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

梶山:「大会に出場する際は座奏55名・マーチング81名という人数の上限があるため、出場メンバーのオーディションを行いますが、入部やパート決めに際してはオーディションを行っていません。初心者・未経験者も大歓迎です。例年5名くらいの初心者が入部しますが、そのほとんどが『愛工大名電の吹奏楽部が強豪であること』を知らずに入学してきた生徒です。初心者はクセがないのでどんどん上達していく傾向が強いですね」

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円

梶山:「定期的に支払っていただくような、いわゆる“部費”に該当するものはありません。大会等の遠征時、移動+1泊分の旅費は学校が負担してくれますが、超過する場合は都度費用を徴収します。衣装について、座奏は個人購入でマーチングは無償貸与です。楽器のレンタルも基本的に無償です」

 

コロナ禍での活動について聞いてみました

写真提供:フォトクリエイト

Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.大会参加はせず、練習のみ可能な範囲で行った

Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行う予定ですか?(項目に該当しない場合は記述をお願いします)
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

梶山:「2020年度、定期演奏会は行いましたがマーチングはできませんでした。2021年度も定期演奏会を行い、マーチングは小規模で実施しました。2022年度になってようやくコロナ禍以前と同規模での活動をすることができました」

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・メンバーのモチベーション維持

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.

梶山:「コロナ禍では、部員同士が会う機会も観客の皆さまの前で演奏する機会も減りました。そこで、これまで普通に活動できたことが当たり前ではなかったということに改めて気付かされました。そして活動再開後は、部員たちが『吹奏楽やマーチングをやれることの意義』を感じることができました。

それまで毎日学校で会えていた部員たちですが、それぞれ自宅で待機していた時期も連絡を取り合って絆を深めました。コロナ禍でもお互い支え合い、大変な時期を共に乗り越えられたことで、人と人との繋がりの大切さを感じることができたように思います。

長期間の活動中止や大会中止などは部員同士の距離を遠ざけたようにも思えましたが、結果的に彼らの絆は深まったように感じます。コロナ禍は、吹奏楽やマーチングの活動の本当の意義を改めて私たちに教えてくれたように思います」

写真提供:フォトクリエイト

2023年になってようやくコロナ禍も沈静化し、ここ数年叶わなかった学校同士の交流や遠征も行われるようになった。以前のような活気を取り戻しつつある吹奏楽・マーチング界で、愛工大名電の活動姿勢には明るい未来や希望を感じられた。同世代の音楽仲間とともに切磋琢磨し、好きな楽器に向き合える時間は人生の宝物になるだろう。これからも明るく素晴らしいサウンドを響かせていってほしい。

愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部

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