マーチングの大会映像はどうやって作られているの? パルス東京に聞いてみた

マーチングの大会映像でおなじみの「パルス東京」。パルスの撮影した大会映像を見たことがきっかけでマーチングを始めた人も少なくないだろう。大会映像は出演者にとって大切な思い出の記録であり、マーチングファンにとってはいつでも感動を手元に置いておける貴重なアイテムだ。

あの映像はどのように作られ、私たちのもとに届けられているのだろうか?今回は、パルスグループ企業のパルス東京代表取締役社長を務める内迫裕(うちさこ・ひろし)氏にお話を伺った。

㈱パルス東京(PALS東京)は、大阪府吹田市に本社を置く㈱日本パルスのグループ企業。マーチングバンド・吹奏楽コンサートライブの撮影・中継・映像企画制作(DVD・ビデオ)等を手掛けている映像制作会社だ。

日本パルスは1983(昭和58)年1月創設。当時、ソニー関連グループに勤めていた内迫さんらが家庭向けビデオデッキ『ベータマックス』の市場拡大を見込んで、撮影部門を独立させる形でスタートした。

大会記録を音源レコードからビデオに変えた

当時吹奏楽の演奏映像が動画として残ることはほとんどなく、音声のみを収録したレコードが一般的だった。内迫さんたちは関西の演奏団体を中心に『演奏映像をビデオで撮りませんか』と話を持ちかけたところ、多くが好感触を持ってくれたという。そして、関西にある吹奏楽連盟から『夏にコンクールがあるので撮ってみませんか』と声が掛かった。

当初は記録映像的な撮影を行っていたが、内迫さんは「せっかく動画を撮影しているのに、何の音楽性もなくカメラを回している」ことに疑問を感じていた。そんな時、ある仕事で見た光景に閃きを得たという。

内迫:「縁あってNHK大阪から京都市交響楽団の撮影の手伝いを依頼されたのです。その時のディレクターさんが楽譜を見ながらカット割り(※1)をされていて、1カメ・2カメ・3カメ(※2)……と切り替えながら撮っているのを観たときに『これだ!』と思い、自分たちにもその手法を取り入れることにしました。とはいえ当時の私に音楽の知識はほとんどなく、ピアノ教室に通うなどして譜面を読めるようになるところから始めました。現在音楽(吹奏楽関連)関係の撮影では譜面を使うのが一般的になっているようですが、その当時にはなかったです」

マーチングを本格的に撮影するようになったのは、1987(昭和62)年に神戸ポートアイランドホールにて開催された『全日本マーチングフェスティバル’87』。その後、1994(平成6)年1月に日本武道館で開催された『第21回マーチングバンド全国大会』からマーチング協会主催大会の撮影も行うようになった。

※1 アングルや構図を事前に決めること
※2 複数台のカメラが同時に稼働している場合、判別するために番号で呼ぶことが一般的

大会映像はどうやって撮ってるの?

内迫:「吹奏楽は着席して動かないので、撮り手側が演奏者の意図を汲み取って、アングル等を工夫して撮影する必要があります。マーチングの良さは全景(フルショット)だけでも楽しめるところでしょうか。フロアの枠内で完結するし、定点で見ているだけでも面白いですよね。ただ、カメラが複数台入っているのは『全景の中でも何を映したいのか』をチョイスするためです。例えば、ソロパートなんかがそうです。露骨にクローズアップするのではなく、見る人にとってストレスなく自然に入っていけるような映像を目指しています」

マーチングの大会撮影を任されるようになってからもDCI(Drum Corps International)の大会を視察しに行ったり、マーチングバンド指導者研修会に参加したりと、研究を重ねたという。とはいえ、目まぐるしく展開するショーを余すことなく撮るにはどのようなポイントがあるのだろうか?

内迫:「スコアがあれば一番良いですね。曲の進行がわかりますし、ソロなどフォーカスする部分が把握出来るのでカット割りを決められます。全体が大きく動く場面なら全景、下手側でソロをやっていればそちらを撮るなど、事前に用意していなければ出来ないので、複数台のカメラで待ち構えています。カンパニーフロントなどは移動しながら撮りますが、前方で構えていては正面しか捉えられません。横一列は横から撮りたいので、担当者がインカムでカメラにポジション移動を指示します。全国大会の場合、出場する8~9割の団体が事前にスコアを提供してくれたり、ショーの動画を送ってもらったり等で演目の情報提供をしてくださっています。あとは地区大会の映像を参考にしています。昔に比べて事前情報が豊富になりましたね」

パルス東京直伝! マーチング映像を撮るコツ3選

年度末の演奏会シーズンを前に、活動の記録を動画に収めようと考えている団体も多いだろう。コロナ禍で演奏会映像を配信する団体も増えており、『マーチング映像の価値』はここ数年で大きく上がったと言える。

ショープログラムや演奏会の構成を理解しているメンバー・プレーヤーであれば、見せ場を理解しているのである程度のものが撮れる可能性はある。しかし、演奏会となると当日だけ手伝いに来るOB・OGだったり、保護者などに撮影を依頼することも多い。また、一般団体や学校の部活動が本格的な機材を手配することは容易ではない。アマチュアでもいい映像を撮るためにはどんな点に注意すればよいだろうか?

※今回は動画撮影の手法についてのインタビューのため、著作権に関しての内容は割愛させていただきました。実際に映像配信や動画撮影を行う場合は、演奏楽曲に応じてご対応をお願いします。

Q.どんな機材を使ったら良い?
A.スマホやタブレットでも問題なし!まずはやってみることが大切

内迫:「演奏会の配信は積極的に取り組むべきだと思います。我々プロが手掛ける場合は絶対にミスがないようインターネット回線から準備を行いますが、アマチュアの方であればスマートフォンやタブレット端末からでも良いのではないでしょうか」

Q.撮る上でのコツは?
A.定点アングルでOK! 大切なのは「画よりも音」

内迫:「マーチングの映像であれば、定点アングルでも問題ないと思います。ただ、音声には注意が必要です。スマートフォンの場合、内蔵マイクが音量変化に対応出来ずに潰れたような音になってしまうことが多々あります。可能であればミキサーが入って対応できたらいいんですけどね……画よりもまず音が大切だと思います。高価なものでなくても、外付けのマイクなど用意できればいいですね」

Q.その他気を付ける点は?
A.フロアを余すことなく写せる広角レンズがあればベター

内迫:「マーチングはフロアを広く使うので、動画を撮っても両端が切れてしまっていることがありますよね。全景を撮るのに適している広角レンズがあればなお良いかなと思います」

内迫さんは「演奏会の動画を撮ったり配信するのはアピールする場が増えたと思って恐れずに挑戦してみて欲しい」と話していた。これから演奏会を迎える団体には、これら3つのコツを意識して動画撮影に取り組んでみてはどうだろうか。

<パルス東京>

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