【マーチングバンド解体新書】マーチング界のアイドルを目指す「神戸弘陵学園高等学校マーチングバンド部」

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回紹介するのは『神戸弘陵学園高等学校マーチングバンド部』だ。先日の『とうきょう総文2022』でも渾身のパフォーマンスを披露し、パレードでは沿道に集まった観衆から拍手喝采を浴びていた。
古くから他校と一線を画したスタイルで注目されていた学校だが、普段はどんな活動をしているのだろうか? 顧問の福本浩也(ふくもと・ひろや)先生と水彩乃(みず・あやの)先生にお話を伺った。パフォーマンス動画も満載なので、ぜひ記事とあわせてご覧いただきたい。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

 

神戸弘陵学園高等学校マーチングバンド部について

団体正式名称:神戸弘陵学園高等学校マーチングバンド部(コウベコウリョウガクエンコウトウガッコウ)
団体所在地:兵庫県神戸市北区
創設年: 1984年
団体の編成:ブラス、パーカッション
2022年度の楽器編成は、
木管:Fl、Cl(Tpと兼任)
金管:Tp、Hr(DMと兼任)、Tb、Bariton、Sousa
打楽器: SD、TD、BD、BD
(楽曲によってはエレキベースやエレキギター、電子ピアノも用いる)
活動理念:個性を尊重して他のバンドにないエンターテイメントを目指す。マーチング界のアイドルになる。

神戸弘陵学園高等学校(以下、神戸弘陵)は六甲山麓にある1983(昭和58)年創立の私立高校。当初は男子校だったが、2014年から共学になった。特色としては運動部の活動が盛んで、男子硬式野球部、女子硬式野球部、バレーボール部、男子サッカー部、女子サッカー部は全国レベルの実力と実績を持つ。

福本:「マーチングバンド部は学校創立2年目(1984年)に設立されました。吹奏楽部としてではなく、最初からマーチングバンド部です。DCI(Drum Corps International)のようなドラムコー(Drum Corps)を目指し、当時では珍しくオールマーチングブラスで活動していました。当時はまだ男子校だったのですが、迫力のあるブラスサウンドを評価していただき、日本武道館で行われていたマーチングバンド連盟の全国大会(現:日本マーチングバンド協会)にも出場したこともあります。オーストラリアやアメリカ、韓国にも遠征したことがあります」

 

他の団体にはない「神戸弘陵ならでは」なエピソード

神戸弘陵といえば抜群のエンタメ性を持つパフォーマンスが魅力だが、現在のスタイルになったのは「生存戦略」だという。少人数でできることを模索した結果とのことだが、一度見たら忘れられないインパクトを与える唯一無二のものになり、活動理念の『マーチング界のアイドルになる』という言葉通り、見る人を巻き込む力を持つものになった。

2012年に行われた第36回全国高等学校総合文化祭(全国高総文祭とやま2012)では、前年に発生した東日本大震災で被災された方々を励まそうとパフォーマンス前に会場の皆さんに協力をお願いし、客席総立ちでエールを送った。

福本:「我々も阪神淡路大震災で被災した経験があり、何かできることはないかと考えまして。自分たちのような演奏スタイルだからできたことだったのかなと思います」

そんな神戸弘陵の評判は海を渡り、韓国にも伝わっていた。

福本:「ある日、学校に韓国から国際電話が掛かってきたんです。私達のパフォーマンスを見たそうで、『ぜひ韓国でパフォーマンスをしてもらえないか』と英語でご依頼されました。全く面識のない方からのお電話だったことにも非常に驚きました」

 

そうして実現したのが、『第5回韓国国際ウインドバンドフェスティバル』への出演だった。パフォーマンスは動画のとおり大好評で、2018年に『麗水(ヨス)マーチングバンドフェスティバル』にも招待された。

 

遠征時の様子について福本先生は「韓国のみなさんは熱狂的で、あまりの大歓声に、まるで自分たちがBTSにでもなったかのような気持ちになりました」と笑って話してくれた。

 

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.平日全て(授業終了後)、日曜は原則休み

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋外

 

2.メンバーについて

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.24名(2022年8月現在)

水:「現在は兵庫県民のみで、24名が在籍しています。男女比は学年によってことなりますが、全体としてはちょうど1:1です」

Q.新規加入者は例年何名くらいいますか?
A.~10名

Q.退団者(シーズン途中を含む)は例年何名くらいいますか?
A.~10名

 

3.実際に加入するためには

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.原則部費はなし

水:「楽器は無料で貸与できます。費用が発生するとしたら大会などの遠征費と、衣装クリーニング代が年額8千円です。手袋やブーツなどは学校からの貸出になります」

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.特になし

 

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.大会参加はせず、練習のみ可能な範囲で行った

Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行う予定ですか?
A.練習を行い、大会にも参加予定(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.特になし

神戸弘陵の普段の活動発表の場としては、全国高校総合文化祭(高校総文)、近畿高等学校総合文化祭(近畿総文)と、マーチング協会・吹奏楽連盟などが主催する大会と、地域イベントが主だという。コロナ禍で大会やイベントが激減した際には、元々行っていなかった定期演奏会などの自主公演を敢えて開催し、自分たちの活動の場を作ったそうだ。

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.これから先は、誰も予測できない時代になっていくと思われます。そのような状態の中でも、「自分達のできることを考えて行動する」力が、コロナ禍で身につけられたと思います。

 

『とうきょう総文2022』について聞いてみました

神戸弘陵は、2022年夏に開催された『とうきょう総文2022』でパレード・部門大会ともに出演した。部門大会のショー『DRAGON BALL』では、小編成ながら工夫を凝らし、マーチングを知っている人はもちろん、知らない人が見ても楽しめる内容になっていた(もしまだ見ていない方がいたらぜひ動画を見ていただきたい)。

>これぞ青春の1ページ!「とうきょう総文2022」マーチングバンド部門をプレイバック

 

水:「客席にいるみんなを盛り上げよう! ということで、ドラゴンボールのキャラクターのコスプレをしました。ドリルや曲は顧問の福本(動画冒頭に登場する亀仙人役)が描いていますが、ショーの中でのダンスは、ダンス経験のある生徒が中心になって振り付けなどを考えてやっています。生徒たちはショーを良くしようと自分たちで工夫したり案を出したりして取り組んでいました。みんなマーチングが大好きなんです」

30メートル四方を縦横無尽に超高速展開するドリルや、100人超の荘厳なサウンドがなくとも「推せる」神戸弘陵は、間違いなくマーチング界のアイドルそのものだ。そしてマーチング界の多様性を支える存在でもある。関西地区以外ではなかなか機会に恵まれないかもしれないが、チャンスがあればぜひ一度生で見てほしい。生徒たちの青春のきらめきは、あなたに元気を与えてくれるだろう。

「神戸弘陵学園高等学校マーチングバンド部」

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