少ない練習時間で効率的に練習を進めることは、どのバンドにおいて永遠のテーマだ。反復練習が必須のマーチングバンド(ドラムコー)にとって、全体練習でのブラッシュアップの割合を少しでも多く設けたい。そのためには個々のメンバーの理解度の向上が必須である。
とはいえ、「予習・練習後の復習をしっかり行いたいけれど、日常生活に追われてなかなか時間を割けない」という人も少なくないのでは。また、新しいドリルを作成した(既存のドリルの変更を行った)場合、いざ練習を行うまでの工程とコストに頭を抱えている指導者もいるだろう。
そこで今回注目したのは、マーチングドリルアプリ『UDBapp』(ユーディービーアプリ)だ。練習の効率化はもちろん、予習・復習の強い味方となってくれること間違いなしの最新ツールである。
『UDBapp』とは、簡単に言うと「スマートフォン・タブレット端末で譜面とセットブックをチェックできるマーチングドリルアプリ」である。
開発元のUltimate Drill Book社(UDB)はアメリカ・テキサス州オースティンにあり、2016年に米国版『UDBapp』がリリースされて以降、瞬く間にアメリカ全土に広がり、現在では10万人のユーザーを抱えるほどに。日本では2020年夏にリリースされ、UDBの基本機能はそのままに「日本独自のフィールドサイズ」やコーディネートシートに対応している。
現在、DCI Div.1の多くのトップコーから日本国内の全国大会常連団体が導入している。実はこのアプリ、DCIのトップコーでのプレー・指導経験があるUDB創業者たちによって開発されている。プレーヤーと指導者のニーズを熟知しているからこそ、多くの支持を得ているのだ。
従来、新しいドリルシートの配布や、既存のドリルシートの変更・差し替えを行う場合、
・人数分のシートをプリントアウト
・配布されたシートで自分のポイントを確認
・ひとコマずつチェックしながら進行
等の工程が発生していた。
UDBappを使用する場合、クリエイターは作成したドリルシート(※Pypare 3Dのみ対応)と楽曲データをアップロードすればOKで、メンバーはログイン状態でアプリを開けば「最新バージョンのデータで作成された自分専用のデジタルセットブック」として使用できる。印刷コストが削減でき、練習に参加できなかったメンバーのフォローアップにも有効だ。
また、メンバーの色を変更したり、オリジナルのノートを作成したり、楽譜とドリルをリンクさせる等の練習する上で必要な機能が備わっている。
UDBappは有償商品で、『UDBapp』と拡張版の『UDB Pro』の2種類がある。いずれも年間契約のみのサブスクリプションとなっている。使用できる機能は下記のとおり。
機能についてはUDBappのサイトで各種チュートリアル動画を公開しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
実際に使用している団体のインタビューからもわかるように、UDBappは各団体が抱える様々な問題を解決するだけでなく、予習・復習にも大きく役立つアイテムだ。個人的には「常にドリルシートが最新のものに更新されていること」、「音源も一緒に流れるセットブックがいつでも手元にあること」はメンバー目線的に非常に心強く感じた。特に、これまでのような環境・頻度で練習を行えないコロナ禍においてはなおさらだ。また、自分のポイントやステップサイズだけでなく、ドリル進行の全体像を把握できることによって、ショーに対する理解度は深まることだろう。
マーチングの指導経験が浅い方にとっても、これまで紙芝居のように見えていたドリルシートが、音楽付きの全自動で見られるようになるのは頼もしいことだ。
導入コストも月額換算で考えれば決して高額ではない。アプリ内機能の習熟には多少時間がかかる可能性があるものの、在宅時間を有効活用していけば問題ないだろう。この機会にぜひ導入してみてはいかがだろうか。