【マーチングバンド解体新書】革新的老舗!「横浜インスパイヤーズ」

もうすぐ始まる新年度。学校を卒業し、新たに一般団体へ加入を希望する人もいるだろう。「あの衣装を着たい」「ショーを見て好きになった」というものから、「通いやすい」「母校のOB・OGが多くてやりやすい」など、様々な理由で所属先を選んでいるのではないだろうか。

しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、各団体の活動頻度は例年とは一変してしまった。オンライン説明会や団体HP・SNSなどでも情報は得られるが、実際のところはどうなのだろうか? そこでMarching Naviでは 「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビュー し、 正しい情報を広く詳しく発信していこう と考えた。プレーヤーの「自分に合った団体選び」のお手伝いができれば幸いだ。

初回となる今回は『横浜インスパイヤーズ』で隊長を務める星野昌康(ほしの・まさやす)さんに話を伺った。

横浜インスパイヤーズについて

団体正式名称: Yokohama INSPIRES Drum&Bugle Corps(ヨコハマインスパイヤーズ ドラムアンドビューグルコー)
団体所在地: 神奈川県川崎市
創設年: 1982年
団体の編成: ブラス(G管ビューグル)、バッテリー、フロントピット、カラーガード
創設目的: 日本にドラムコーを広めたいという志を持った有志が集まって始まった
活動理念: 「MISSION STATEMENT」 私たちはたゆまぬ挑戦を通して全ての人に人生を豊かにする感動を与え続けます ―We Inspire all to enrich the human life through the everlasting challenge.―

星野:「コンテストに出場する上ではもちろん結果(評価)に拘りますが、いわゆる『大会での勝ち負け』に比重を置いているわけではなく、 関わっている人みんなが楽しめる音楽を作る ということを理念として活動しています。大会での結果(評価)は、あくまで活動の一部です」

他の団体にはない「インスパならでは」なエピソード

星野:「私達には Alumni Corps が存在しており、 INSPIRESグループ全体で見れば非常に年齢層の幅が広い活動であると考えております。2002年と04年に挑戦したDCA(Drum Corps Associates World Champions)参加時に体感した、『三世代以上に渡ってDrumCorpsを楽しむ事ができる環境』を構築することも活動を継続する大切な目的です。実際に2つのチームに親子でそれぞれ参加している隊員もいます。また、SNSには外国の方からのコメントやリアクションが多いことから、2回の海外遠征(DCA)は成功だったと言えるでしょう」

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週1回(土日どちらかなど)+祝祭日

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋外

星野:「以前は土曜も練習がありましたが、2015年シーズン以降から土曜日は減らしました。大会シーズンが始まる夏くらいまでは練習は基本日曜日だけ です。 合宿は基本的には春のGWだけで、あとは必要に応じて大会前などに行うこともあります。練習場所は原則非公開のため詳細は控えさせていただきますが、横浜近郊にて、ほぼ毎回屋外で行っています」

インスパイヤーズでは 常時3ヶ月先までのスケジュールが決まっており、メンバーは専用ページで確認できるようになっているため、メンバーは予定を立てやすいのではないだろうか。 練習回数は一般団体の中でもかなり少ないため、練習の質を担保するために個々の習熟度を上げていくことが必要だ。全体練習はおさらいありきで進行するため、個人の練習時間を多く必要としていたり、マンツーマン指導を望んでいる人にとっては、残念ながらマッチしない可能性が高いだろう。

2.メンバーについて

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.100名以上

Q.メンバーの平均年齢はどれくらい?
A.19~22歳

Q.新規加入者は例年何名くらいいますか?
A.30~40名

Q.退団者(シーズン途中を含む)は例年何名くらいいますか?
A.30~40名

星野:「現在メンバーの中で一番多いのは大学・専門学校生で、高校生はほとんどいません。継続年数は平均3年ほどで、退団の主な理由は進学や就職です。近年はフェードアウト(シーズン途中での離脱)するメンバーはほとんどいません。全体的にどのパートも1/3くらいのメンバーが毎年入れ替わっているような状況です」

メンバーの半数は神奈川県在住で、神奈川県民と東京都民がメンバーの8割に相当し、埼玉県と千葉県在住が若干名。現在は地方から通っているメンバーはいないそうだ。なお、2020年度のチームスタッフの人数は6~10名(テクニカルスタッフは~5名)、クリエイターは全員アメリカ在住で、ディレクターとコーディネーターで協議し活動方針に沿う人に依頼しているとのことだった。

3.実際に加入するためには

Q.年齢制限はありますか?
A.満16歳以上、上限は個別に相談

Q.加入に際しオーディションを行っていますか?
A.人数に関わらずガードとバッテリーはオーディション(スキルチェック)があります

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.約21~25万円

参考までに:
必ず発生するもの
・入隊金(初年度のみ、1万円)
・活動費用(傷害保険代含む、年間12万)
・楽器レンタル代(保険代含む)
・衣装レンタル代
・その他衣装代(靴、手袋などは自費)

場合によって発生するもの
・大会エントリー費
・遠征費(保険代を含む)
・合宿費(保険代を含む)
※金額は所属パートや活動状況によって変動する可能性があり、あくまで2020年度ベースの概算です

ここで注目したいのが、費用の中に保険代が含まれている点だ。不測の事態によるケガや楽器の破損があった場合、メンバーが高額な実費を負担せずに済むように対策されている。

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.あります

星野:「原則として、毎週日曜日の練習と本番(日曜とは限らない)に参加できる事 。 未成年の方は保護者の同意が必要です。インスパでは、練習に2回以上参加した後に入隊説明を兼ねた面談を行ってから入隊の手続きが開始されます」

ちなみに、「初心者の方でも入隊は可能ですが、面接や実際の練習内容等を鑑み、入隊について相談・決定をします」とのこと。初心者でもメンバーになれる可能性はゼロではないので、興味がある方はオンライン説明会などに参加してみてはいかがだろうか。

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.2020年はどのような活動を行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.コロナ禍で困ったこと、どんなことがありましたか?
A.隊員の安全確保、練習場所の確保、大会や会場の情報不足

Q.団体として行った独自の取り組みがあれば教えて下さい
A.無観客オンラインコンサート、クラウドファンディング

インスパイヤーズは2020年11月にオンライン自主公演『Drum Corps Night -Live Stream-』を実施しており、2021年6月にも『INSPIRIT2021』を開催予定だ。なお、練習については従来のスケジュールの2/3程度実施できたという(これはそもそもの設定回数が少ないこともあるとのこと)

星野:「オンラインコンサートについては、2020年度の春先には映像制作会社へライブ配信の手配を進めるなどして早々に準備を進めていました。オンライン配信なども含め、インスパイヤーズという純然たる一般バンドがどこまでやれるのかというラインを常に模索しています。ショーに関しても同じことで、突飛なことはしませんが、やれることには挑戦していきたいと考えています」

新規入隊を検討している人へのメッセージ

星野:「インスパイヤーズは2021年度も大会参加を決めていますが、6月まではコンサート(自主公演『INSPIRIT2021』)のための練習がメインとなる予定です。そのため、練習内容やペースも例年よりも未経験者の方にとってやりやすい環境になるかもしれません。ロナ禍で活動制限があるため大変なことも多く予想されますが、自主公演を開催するなどして自分たちで発表の場を作っていくので、日々の練習は無駄にはなりません。もしこれからもマーチングを続けたいと考えている方は、ぜひ検討してみてください!」

2022年に創設40周年を迎える老舗バンドだが、常に新たな可能性に挑戦し続けている革新的な存在だ。まだまだコロナ禍は続きそうだが、長い団体の歴史から得たノウハウをもとにした団体運営で、メンバーとなれば充実した活動を得られることだろう。4月4日(日)より練習見学を再開するということなので、興味を持った方は一度足を運んでみてはどうだろうか?

「横浜インスパイヤーズ」

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