「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は、前回の徳島インディゴゥズと同じく四国地区で活動する小・中学生合同バンド『観音寺マーチングバンドHumming Wind』を紹介したい。日頃の活動や今後の展開について、サポート隊の皆さんからお話を伺った。
団体正式名称:観音寺マーチングバンドHummingWind(かんおんじマーチングバンド ハミングウインド)
団体所在地:香川県観音寺市
創設年: 母体は1970(昭和45)年、現体制は2021(令和3)年から
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション(バッテリー+ピット)、カラーガード
※編成は以下の通り
金管:Trp、Cor、F.Hr、Mello、Baritone、Euph、Tuba
活動理念:
・演奏演技技術向上の実現
・マーチングを通じた教育を実施
・地域の文化向上の実現
バンドの歴史は長く、現在の観音寺市へ合併される前に旧・三豊郡大野原町にあった大野原町立大野原小学校のトランペット鼓隊として1970(昭和45)年に創部され、1986(昭和61)年からマーチングバンド部として活動したことに始まっている。その後、文化庁が策定した「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」や、教員の働き方改革などの影響もあり、2021(令和3)年から小学生+中学生の合同バンド『観音寺マーチングバンドHummingWind』(以降、観音寺MB)としての歩みを始めた。現在は観音寺市内の小学校2校と中学校2校の生徒が参加する地域クラブとして活動に励んでいる。
サポート隊:歴史のあるバンドなので、祖父母の代から三世代にわたって活動しているご家庭もいます。かつてメンバーとして活動し、現在は自分たちの子どもが所属して保護者の立場からバンドに関わっているサポート隊のメンバーも珍しくありません。自分や自分の子どもが卒業した後もバンドの活動に携わったり、応援してくれる人も多いですね。また、地元地域の方々に日頃から支えていただいていて、特に遠征時には車両提供や運搬の協力をしてくださったり、全国大会前の壮行会に地域のお年寄りが足を運んでくださったり、まちぐるみでバンドをもり立ててくださっています。
観音寺駅の皆様、温かく迎えてくださって本当にありがとうございました。
とても嬉しくホッとしました。お世話になりました!#観音寺駅#jr四国 #JMBA2023#第51回マーチングバンド全国大会#マーチング #香川県 #marchingband pic.twitter.com/thMK0ZuvAi— 観音寺マーチングバンドHumming windサポート隊 (@WindHumming) December 11, 2023
観音寺MBの地元からとても愛されていると感じたのは、X(旧Twitter)のこのポストだ。2023年の全国大会後、長旅を終え地元の観音寺駅に到着したメンバーへ向けて、駅員から労いのアナウンスが流れた。マーチングバンドの活動が地域の文化としてしっかりと根付いており、子どもたちの成長や活躍をまちぐるみで見守り育んでいることが伝わってくる。
サポート隊:毎年様々なテーマに取り組んでいますが、過去には大野原町名産のレタスを使ったりとバラエティに富んだショーに挑戦しているバンドです。 また、小・中合同バンドで小学生の割合が多いのですが、全国的にも珍しいのではないでしょうか。今後少子化が進むにつれてバンド編成も多様化していくと思うので、我々がモデルバンドになれたらいいなと思います。
観音寺MBは文化庁の「令和4年度 地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業」モデル校として採択され、部活動の地域移行という課題にも向き合ってきた実績もある。学校部活動から地域バンドへ切り替えて活動していくことは一見大変そうに思えるが、指導教員の離任による不安から開放されたり、メンバーを広域から募集することができるなど、メリットも多かったという。何より、小学生と中学生がともに切磋琢磨する環境が創出されたということは大きく、地域の文化活動の向上にも寄与できているのではないだろうか。今後地域移行を検討しているバンドにとって参考となる点も多いだろう。
>令和4年度 地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業 成果報告書│文化庁
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週3回以上
基本的に平日4日(放課後)+土曜(半日)に練習を行っている。小学生と中学生で下校の時間のばらつきはあるが、小学生が先に練習を始め、あとから中学生が合流する流れとなっているそうだ。
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.2024年度は74名(小学生40名、中学生34名)
Q.所属メンバーの平均年齢を教えて下さい
A.13~15歳
Q.所属メンバーの中で「一番多い」属性はどれですか?
A.小学生
Q.所属メンバーの居住地について教えて下さい
A.団体所在地「内」の都道府県から通っている
サポート隊:2024年度は中3が若干少ないですが、小4から中3まで人数はほぼ均等です。現在、観音寺市内の小学校2校と中学校2校の子どもたちが参加してくれています。
Q.年齢制限はありますか?
A.小学4年生~中学3年生
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.加入した際に発生する費用については下記の通り
活動費用は、小学生が年額3万3千円(年間総額6万7千円+全国大会の遠征費用5万6千円)、中学生が年額4万4千円(年間総額7万円+全国大会の遠征費用7万円)。このほか、大会などの遠征時にバス代が年額およそ8千円(活動状況により変動あり)が発生するとのこと。
本番用衣装については全セクションで無償貸与、ブラスとパーカッションの楽器、カラーガードの手具も無償貸与とのこと(但しスティックは自前購入)。もちろん自前楽器の使用も可能だ。
Q.その他、活動参加に際し必要な条件があれば教えて下さい
A.夏休みの宿題は独自に締切日を早めに設けていて、必ず提出できるようにしています。
Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・マーチングインオカヤマ
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・企業イベント
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・演奏会などの自主公演
サポート隊:大会だけでなく、地元の「銭形まつり」の学生音楽祭や、独立リーグ(野球)の四国アイランドリーグの試合、全日本学生選手権(全日本インカレ)のトライアスロンの大会でも演奏させていただいています。また、毎年3月にスプリングコンサートを開催しているのですが、24年3月開催時の来場者数は600名でした。メンバーの保護者や親族、OB・OGだけでなく、地元の方も多かったです。
ちなみに、観音寺市の人口は約5万7千人(令和5年度3月時点)。いかに地元からの支持が篤いかを数字が物語っている。
Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・マーチングバンド全国大会(M協主催)への出場
・活動拠点の地域で行われるご当地イベント(お祭りなど)への参加
・テーマパークやスポーツイベントなどへの出演
・自主事業(コンサートやイベントなど自ら企画し実施するもの)の開催
・動画や写真などのコンテンツ制作
・本番や大会など対外的なものではなく、資金調達や活動環境の向上など団体内に還元できるもの
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.資金面
バンドの運営費用には自治体などの補助金を活用したり、サポート隊員の会費(年額2千円、任意加入)や、バンドへの寄付、グッズ売り上げを充てるなど工夫をされているが、大会時の遠征費用を筆頭に資金繰りは課題だそうだ。
取材を通じて、日々の暮らしの中にマーチングバンドがある観音寺地域の人たちの姿が想像できた。サポート隊員の方々は「子どもたちの成長から大人たちも得るものが多い」という。様々な苦労もありながら、今日まで長年バンドの活動を続けられているのは、サポート隊や地元住民からの愛ゆえだろう。大きな愛を受け、子どもたちも日々練習に励んでおり、バンド自体も全国大会常連団体として結果を残し続けている。
2024年は7月の銭形まつり学生音楽祭や、9月の香川県マーチングバンドフェスティバル、10月のマーチング・イン・オカヤマにマーチングバンド全国大会四国予選、11月の全国高等学校総合文化祭プレ大会のパレード参加など多数の演奏機会を控えているので、近隣地区の方は足を運んでみてはいかがだろうか。
「観音寺マーチングバンドHummingWind」
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