「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回紹介するのは、先日開催された第50回マーチングバンド全国大会に出場した『春日部市立春日部中学校吹奏楽部チャレンジャーズ』だ。豊かなサウンドが織りなす華やかなショーで多くのファンを持つバンドだが、日頃はどのような活動をしているのだろうか? 顧問の昼間奈津子(ひるま・なつこ)先生からお話を伺った。
団体正式名称:春日部市立春日部中学校吹奏楽部チャレンジャーズ(カスカベシリツ カスカベチュウガッコウ スイソウガクブ チャレンジャーズ)
団体所在地:埼玉県春日部市
創設年:マーチングの活動は1998(平成10)年から
団体の編成:ブラス(※1)、パーカッション、カラーガード(※2)
※1 編成詳細は以下の通り
木管:Fl、Cl、Sax(Sop、Alto、Tenor、Bass)
金管:Tp、Hr、Tb、Euph、Tuba
※2 マーチング活動時のみで常設パートではない
活動理念:凡事徹底
春日部中学校に吹奏楽部は以前からあったが、マーチングを始めるきっかけとなったのは、1998(平成10)年4月。春日部市立豊野中学校で吹奏楽・マーチングバンドの指導実績がある木村信之(きむら・のぶゆき)教諭が異動してきたことだった。
昼間:「当時の部員数は36名(1年生は9名)で、部活を休んだりする部員も多く、あまり活発ではなかったそうです。木村教諭の赴任から一ヶ月後の同年5月、春日部市の『藤まつり』でのパレードの先頭を春日部中が務めることになりましたが、当時はパレード演奏が年に1回程度、専用の衣装もなくセーラー服でパレードに出演していました。そこで、マーチングを始めて3年目になる豊野中学校との合同練習を行うことになったそうです」
木村教諭の前任校である豊野中は吹奏楽連盟のマーチングコンテスト西関東大会に出場を果たしており、実力も意識も春日部中とは大きな差が生まれていた。元気に笑顔であいさつしてくれ、親身になって教えてくれる豊野中の生徒たちに対し、春日部中の生徒たちは「同じ中学生なのに……」と刺激を受ける。そして、合同練習後に春日部中の生徒たちが提出したレポートには「自分たちは何をしてきたんだろう」や「残りの数か月本気でやりたい」などといったことが書かれていたそうだ。
昼間:「そのとき生徒たちが名付けたチーム名が『チャレンジャーズ』~目指せ宇宙!~でした。これがチャレンジャーズのスタートです。当時は練習場所もなく、夏休みは体育館が空いている時間を狙って走って体育館へ向かったり、運動部が体育館を使わない早朝5時に集まって練習したりしていたそうです」
ちなみに、ショーのタイトルでおなじみの『チャレンジャーズより愛をこめて』は、マーチング活動当時からのものとのこと。
話を伺うと、どうやらチャレンジャーズはOB・OGや保護者が大変協力的であるということがわかった。日頃の練習にも多くのOB・OGが訪れ、現役生徒のサポートを行っているそうだ。また、ショーで必要なプロップも保護者のお手製とのこと。
昼間:「『おやじ〜ズ』と呼ばれる、プロップを製作するお父さんチームが存在します。現役部員の保護者だけでなく、卒業生のお父様達も毎年御協力いただき、自慢のハイクオリティなプロップを製作して下さっています!」
また、卒業生の多くがマーチングや吹奏楽を続けていることも特徴的で、マーチングコンテストや吹奏楽コンクールにおいて全国に名を連ねる強豪校に進学する生徒も多いそうだ。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.通常、平日は毎日下校時間まで。土日は半日または終日練習(大会などの状況による)
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
昼間:「春日部中は運動部の活動も盛んなのでなかなか体育館が使えないという事情もありますが、平日は音楽室や廊下・教室などで曲の練習、土日は体育館で動きの練習をします。私たちは『音だけでも勝負できるショー』を作りたいと思っています。吹奏楽連盟のコンクールにも出場しているので、コンクールでの経験を活かしたマーチングの音作りをしています。『目を瞑って聴けば豊かなサウンド、目を開けば壮大なビジュアル』というのが目標です」
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.59名
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
入部してくる生徒の9割が未経験だそうだ。その上で吹奏楽連盟のコンクールやマーチングコンテスト、マーチング協会の大会に出場し結果を残すことは並大抵のことではない。初心者メンバーのフォローには卒業生も手助けしているそうで、ここでもOB・OGの絆の強さを感じられる。
また、カラーガードについては常設ではなくマーチング時のみの活動パートだが、カラーガードメンバーの中にはコンクール時に重要なパートを任される演奏の実力を持った生徒もいるとのこと。
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.活動状況に応じて変動あり
昼間:「年度によりますが、年間15万円程度掛かります。費用は外部の練習会場費やトラック代、楽器のメンテナンス費等に充てられます」
Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.日々の学校生活を大切にすること
Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)
Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)
Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行う予定ですか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)
昼間:「2022年度のマーチングの主な本番は、吹奏楽連盟主催のマーチングコンテストBの部・マーチング協会主催の大会で全部で5回参加しましたが、全員が揃って参加できたのは日本マーチングバンド協会の全国大会だけでした。大会直前でメンバーがやむを得ず欠席しなくてはならない状況も度々あり、大会当日までコンテを調整して覚え直すこともありました」
Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.
昼間:「大会参加で点数等で評価されることに価値を見出すのではなく、音楽・マーチングで表現することそのものを心から楽しむことを改めて感じることができました。また、これまで当たり前に感じていたことが当たり前ではないことを痛感し、メンバーが全員揃って練習できること、本番に参加できること、練習環境、時間があること等、全てのことに感謝する気持ちを部員全員が持てたと思います」
昼間先生によると、チャレンジャーズは「大会での楽器の積み込み・積み下ろしがとても速い」のだそう。片付けを終えた生徒たちは空いた時間で何をしているのかというと、トラックの隣で練習のおさらいや歌いながらランスルーのイメトレをしているとのこと。「初心者ばかりですが、時間を見つけては練習したり、そういった”ちりつも”を大事にしているようです」と話していた。
チャレンジャーズの歴史からは、「チームはきっかけ一つで変われる」という大切なことを教えてもらった。これからもたくさんの”愛のこもったショー”を楽しみに、生徒たちの成長を見届けていきたいと思う。