「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は大阪府を本拠地に活動する『四條畷学園高等学校マーチングバンド Burning Bravers』を紹介したい。
活動内容や部の様子について、顧問の志賀輝久(しが・てるひさ)さん、監督の今川保茂(いまがわ・やすしげ)さん、指揮者の今川直紀(いまがわ・なおき)さんからお話を伺った。
団体正式名称:四條畷学園高等学校マーチングバンド Burning Bravers(シジョウナワテガクエンコウトウガッコウマーチングバンド バーニングブレイバーズ)
団体所在地:大阪府大東市
創設年:鼓笛隊は1935(昭和10)年頃、現体制での活動は2022(令和4)年
団体の編成:ブラス(※1)、パーカッション、カラーガード
※1 編成詳細は以下の通り
木管:Fl、Picc、Cl、Ob、Sax(Sop、Alto、Tenor)
金管:Tp、Hr、Euph、Tuba
活動理念:クラブ活動を通じて、「豊かな心」を育成し「生きる力」を身につける。そして、自分たちの「夢」が叶えられる「実現力」を育む。
【目標】
・勉学とクラブ活動の両立を図り、規律ある生活を身につける
・仲間との良い人間関係をつくることにより、他人への思いやりを養う
・自分自身を鍛え、磨き、成長させる。そして、「協調性」と「自主性」を養う
【モットー】
・全員でカッコよく!仲良く楽しく一生懸命!
四條畷学園高校は1926(大正15)年に四條畷女学校として創設され、2001(平成13)年に共学化された私立学校である。学校創設直後の1935(昭和10)年頃には鼓笛隊が活動していたそうだ。
1972(昭和47)年に高等学校ブラスバンドサークルが設立されると、その後吹奏楽部への改名や中学・高校合同バンド時期などの変遷を経て、1983(昭和58)年から高校単独のブラスバンドとして活動をするようになる。マーチングバンドとしての活動は1994(平成6)年からで、当時は体育祭での演奏のためのものだった。マーチングの大会に初めて出場したのは2002(平成14)年の全日本吹奏楽連盟主催・大阪府マーチングコンテストで、日本マーチングバンド・バトントワーリング協会(現日本マーチングバンド協会)の大会に出場したのは2007(平成19)年のことだった。
これまで吹奏楽部は吹連とM協両方の大会に参加してきたが、2022(令和4)年から吹奏楽部より分かれる形で現体制へ移行した。マーチングバンド部と吹奏楽部が分かれた理由は、文化庁からの「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(平日1日、土日1日以上の休みを設ける指導)、厚労省の「働き方改革」による指導を受け、その中で活動を継続する為の苦渋の決断だったそうだ。
モットーにも「全員で」とあるが、マーチングバンド活動を始めたのも「全員」にこだわったことに由来している。全日本吹奏楽コンクールの実施規定で、高等学校の部の参加人数は55名以内(参加規定・6条)と定められている。四條畷学園も吹奏楽コンクールに参加していたが、1学年の部員数が55名を超えたことにより三年間大会に出られない部員ができてしまう可能性が生まれたため、マーチングをすることによって全員が大会に出られるように常時の活動が始まった。
ちなみに、2021年と2022年のマーチングバンド全国大会には誰一人欠けることなく部員全員で出場を果たしている。新型コロナウイルス感染症のまん延下でも、二年連続「全員」で成し遂げたことは快挙と言っても過言ではない。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週6日
今川直「平日は水曜休みで月、火、木、金が練習です。土日も練習がありますが、月に一度は土日のどちらかがオフになります」
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
今川直:「基本的に学校で練習を行っていますが、大会や本番前は学外の施設を利用します。時には府外まで赴くこともあります。部活動が盛んな学校で、全国大会レベルの運動部が多数あり、校内での練習場所の確保が難しいこと、JR四条畷駅から徒歩すぐの住宅街に学校があることから騒音等の問題もあり、学外の施設を使用しています」
Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い
志賀:「大阪府内在住の生徒が多いですが、兵庫、奈良、京都、滋賀から通う生徒もいます」
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.80名
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
今川直:「入部する生徒の約90%が吹奏楽部出身で楽器経験者は多いですが、マーチング経験者は少ないです。マーチングどころか楽器演奏の経験もない完全初心者は5%程度でしょうか」
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.11~15万円 ※2022年度
四條畷学園では生徒一人あたり年額9万円の「運営費」を保護者が納入して活動を行っている。楽器購入やその維持費、練習会場費(ホール・体育館)と楽器運搬費、その他大会出場に関わる諸経費等は学校から多額の支援を受けている。
また、楽器は自前楽器の使用も可能だが学校貸与(無償)もあり、衣装は3パターンあるがこちらも貸与(クリーニング代は運営費から拠出)となっている。
Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)
2020年度は、長い休校措置の後、感染対策を常に考慮しながら練習を開始。全員で練習ができるように夏場の練習時に水分補給を多くするなど体調管理を行い、練習効率を上げたそうだ。
今川直:「観客の前で演奏演技することができず、何のための練習をしているのかわからず、ストレスが溜まり、仲間の事を思いやることが難しくなりギクシャクしてしまうこともありました。そんな中でもキャプテンを中心としたメンバー全員で『何とかしよう』とする努力と、コロナ禍でも開催された日本マーチングバンド協会のお陰で目標が定まり、e-Marching大会でグッドパフォーマンス賞を獲得することができました」
Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)
2021年度も長いクラブ活動禁止措置があったが、活動再開後には練習効率を上げるために時間の使い方を見直し、メンバー全員で無駄な時間を作らないように心掛けたそうだ。
今川直:「少ない練習でも、良い音やきれいなラインを意識し、メリハリの効いた作品を作り、モチベーションも上がっていきました。その甲斐あって、全国大会では全員で演技することができ、目標としていた金賞を受賞できました」
Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)
2022年度はコロナ陽性者が増える度に練習を止めて、クラスターを起こさないよう細心の注意を払いながら練習を重ねていったという。
今川直:「マーチングバンド部と吹奏楽部に分かれた初年度でしたが、メンバー一丸となり、再開された行事を次々と成功させ、新しい門出を祝福するような実り多き一年になったと思います」
Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・メンバーのモチベーション維持
Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.
今川直:「高校生としての活動期間は三年間しかありません。全員の事もそうですが、特に三年生は最後の一年。目標に向かって積み重ねて来た日々を、努力をどうにかして形にして残したいと考えました」
四條畷学園のショーは、そのシーズンの高3生のイメージをベースに作られるそうだ。2022年度のショータイトルは、『Shining in the Dark』。2022年度の高3生はコロナ禍によって青春の大半を奪われてしまった世代だ。講師陣の3名は、「3年生はコロナ禍での入学から始まり、高校生活のほとんどが暗い日々だったと思う」と沈痛な面持ちで話してくれた。
そんな高3生が暗闇から光を見出し、最後は色彩あふれる世界へ羽ばたいていくドラマティックなショーは、こちらのURLから見ることができる。ドキュメンタリー仕立ての動画なのでぜひチェックしてみてほしい。
また、2023年3月11日(土)・12日(日)には大東市立文化ホール(サーティホール)大ホールにて【第35回定期演奏会 WING CONCERT 2023】が開催予定となっている。現在観覧チケットは絶賛発売中だ。コロナ禍から光を見つけた高3生たちの最後の晴れ舞台でもあるので、お近くにお住まいの方や興味のある方は足を運んでみてはいかがだろうか。
「四條畷学園高等学校マーチングバンド Burning Bravers」
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