写真提供:スタジオゼウス
「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は全国大会の常連校であり、熱狂的ファンも多い『沖縄県立西原高等学校マーチングバンド』を紹介したい。好きな団体に名前を挙げる人も多く、大会会場での声援の大きさも段違いだ。部の様子や活動状況について、顧問の仲本裕樹(なかもと・ゆうき)先生からお話を伺った。
団体正式名称:沖縄県立西原高等学校マーチングバンド(オキナワケンリツニシハラコウトウガッコウマーチングバンド)
団体所在地:沖縄県西原町
創設年:1984(昭和59)年
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション(バッテリー、フロントピット)、カラーガード
※編成詳細は以下の通り
金管:Tp,Mello,Tb,Euph,Tuba
木管:Sax(Sop,Alto,Tenor)
活動理念:勉学と部活動の両立 心に残る音楽、感動のあるマーチング
沖縄県立西原高等学校は、1975(昭和50)年に開校した共学の県立高校で、マーチングバンドのほか男女バレーボール、女子バスケットボールの部活動が盛んだ。甲子園出場経験はないが、プロ野球選手も輩出している。
吹奏楽部は、1984(昭和59)年に初代顧問大城政信(おおしろ・まさのぶ)先生が赴任したことから活動を開始する。1987(昭和62)年に開催された『第42回国民体育大会(海邦国体)』での式典演技(県内高校合同演技)を先導する中心校となったことからマーチングバンド活動に力を入れるようになり、『第17回マーチングバンド全国大会』へ初出場を果たす。以降は全国大会の常連校として名を連ね、金賞のみならず編成別最優秀賞やグランプリを複数獲得している日本学生マーチング界のリーディングバンドである。
私立校が優勢といわれるマーチングバンドの世界で、西原高校は県立高校でありながら長く成果を重ねており、国内だけでなく海外にも挑戦の場を広げている。これまでにアメリカやオランダ、ドイツ、オーストラリア、韓国、台湾、ペルーなどで開催された大会や式典に参加している。
仲本:海外遠征には多くの費用がかかりますが、チャリティーコンサートを開いたり、クラウドファンディングを利用したりすることで、地域や多くの人々に支えられながら活動を続けています。
なお、4年に一度開催される『世界音楽コンクール』にて初出場以来7大会連続で金賞を獲得し、そのうちショー部門チャンピオンシップにおいては世界一を3度獲得している。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.基本的には週6日(平日放課後+日曜)
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋外
Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.65名(2025年度)
現在の部員は64名が沖縄出身(離島含む)で、県外からの入部者が1名とのこと。
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
仲本:新入部員の1年生の半分は楽器自体が未経験で、マーチング経験者に至ってはほとんどおりません。沖縄県内でマーチング活動を行っている小・中学校が減った影響が大きいです。
西原のショーはマーチング未経験の生徒がいることを感じさせないほど例年高い完成度を誇っているが、日々どのような練習を行っているのだろうか。
仲本:3年生が1年生を担当してきめ細かく指導するという風習があります。また、指導スタッフが優秀なのも大きいかと思います。スタッフは卒業生が多いですね。ショーに関しては毎年4月に始動します。これは、新入部員の加入後に状況に見合ったショーを考えているためです。確固たるテーマのもと、編成やパートの実力に合わせて調整を重ねるため、ファーストショー以降もチェンジが多いのが特徴です。
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円
部費については通年で~10万円程度とのこと(活動状況に応じて変動あり)。ブラス、パーカッションのユニフォームは学校からの無償貸与、カラーガードの衣装も同様とのこと。また、ブラス・パーカッションの楽器、マレット、カラーガードの手具(ライフル以外)も無償貸与。スティック、ライフル、靴などの消耗品については個人購入が必要となる。その他、遠征費が都度発生するとのこと。
Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・全日本吹奏楽連盟(吹連)主催大会
・全国高等学校総合文化祭(高文祭)
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・企業イベント
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・他の部活動の応援演奏(甲子園など)
・演奏会などの自主公演
コンテストについてはM協主催大会のほか、吹連のマーチングフェスティバルやアンサンブルコンクールにも出場している。なお、以前は吹奏楽コンクールにも出場していた(カラーガードは木管等の兼任パートだった)が、近年はマーチング活動に専念しているため、カラーガードは常設パートとなっている。
Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・マーチングバンド全国大会(M協主催)への出場
・アンサンブルコンテスト(全日本吹奏楽連盟)への出場
・活動拠点の地域で行われるご当地イベント(お祭りなど)への参加
・海外で行われる音楽祭や芸術祭などの出演
・テーマパークやスポーツイベントなどへの出演
・自主事業(コンサートやイベントなど自ら企画し実施するもの)の開催
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.メンバー数
昨今はショープログラムに応じてコスチュームを作成する団体も珍しくない中で、西原は伝統的なユニフォームのスタイルを貫いているが、実は今年度リニューアルしたという。ネタバレは粋ではないため詳細については伏せるが、伝統を継承しつつマイナーチェンジを行ったそうだ。大会などで見かけた際はユニフォームにも注目してもらいたい。