「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回紹介するのは『鎌倉女子大学中等部・高等部マーチングバンド』だ。先日行われた第59回マーチングバンド関東大会(日本マーチングバンド協会主催)に於いて金賞を受賞し、9年連続の全国大会出場推薦を手にした実力校として知られる。また、部の歴史も古く、多くのOGを排出していることで知られている。部の様子や活動状況について、顧問の大山明生(おおやま・あきお)先生からお話を伺った。
団体正式名称:鎌倉女子大学中等部・高等部マーチングバンド(カマクラジョシダイガクチュウトウブ・コウトウブマーチングバンド)
団体所在地:神奈川県鎌倉市
創設年:1967(昭和42)年
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション、カラーガード
※編成詳細は以下の通り
金管:Tp、F.Hr、Mello、Bari、Euph、Tuba
活動理念:努力なくして栄冠なし
鎌倉女子大学中等部・高等部は、神奈川県鎌倉市に所在する大学付属の中高一貫女子校である。最寄り駅はJR大船駅または本郷台駅となる。設立は1943(昭和18)年で、1959(昭和34)年に京浜女子大学・同短期大学部・同高等部・同中等部・同初等部・同幼稚部と名称を変更し、1989(平成元)年に現校名となった。なお、2026(令和8)年度より男女共学化し、「鎌倉国際文理中学校」、「鎌倉国際文理高等学校」へ改称する予定となっている。
マーチングバンド部としての本格的な活動は、1967(昭和42)年に遡る。それまで使っていたリコーダーを廃止してトランペットを導入し、日本で初めての女子生徒のみによるトランペット鼓隊として発足した。そうしたルーツから、2001(平成13)年度まで部の名称は「鎌倉女子大学中等部・高等部トランペット鼓隊」だった。この名称に懐かしさを覚えるマーチングファンも多いことだろう。歴史ある団体だけに母娘で在籍する生徒も多く、どの代にも大体「二世生徒」が存在することも特徴だ。
男女別学の学校が減少の一途を辿る昨今、鎌倉女子も共学化を控えている。共学化決定は2023(令和5)年度のことだったそうで、決定以降は以前にも増して女子校ならではの個性を大切にするようになったという。
大山:「女子だけの良さ」を活かしたショーづくりは意識しています。女子校らしさをしっかり出していきたいという考えはあります。ですが、生徒たちは「女の子だから……」と言われたくないという気持ちもあるようです。筋トレやランニングなどの体力づくりにも積極的に取り組んでいて、体育祭ではマーチングバンド部の生徒が運動部に負けじと活躍しています。
また、中高6学年が共に活動する点も特徴の一つだ。シーズン終盤の大会などとなると体格以外で中学生と高校生の見分けがつかないほど生徒一人ひとりがしっかりとパフォーマンスを披露している。
大山:中学生は負担が大きいけれど努力してくれていると思います。(中学生と高校生に差がないように見えるのは)身近に良いお手本となる高校生がいることで、中学生の成長が促されているのではないでしょうか。中3ともなると、高校生に劣らないほどの実力を身に着けている生徒もいるほどです。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.平日週4日
大山:基本的に平日1日休みを含む放課後です。大会前は土日も練習を行うことがあります。
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋外
大山:基本的にグラウンドで行います。ぎりぎりで二面取れる広さがあり、恵まれた環境だと感じています。
Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い
生徒のほぼ全員が神奈川県(大半が横浜市、藤沢市、鎌倉市)で、過去に東京都から通う生徒もいたとのこと。
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.56名(2024年度)
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
大山:本校は高等部からの入学も可能なのですが、中等部から入部する生徒は初心者が多く、高等部から入部する生徒は吹奏楽やマーチングバンド経験者がいます。高等部からの生徒は部活目当てに入学している場合も多いようです。
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.16~20万円
鎌倉女子の部費は3万6千円(月3千円)で、衣装はカラーガードを含めた全セクションが無償貸与。楽器も無償貸与(学校備品)で、個人所有楽器の使用も可能である。部のウインドブレーカー(3千5百円)とマーチングシューズ、手袋等の消耗品は個人購入となっている。練習着に細かな定めはなく、学校のジャージ等を着用する生徒が多いそうだ。そのほか、活動状況によっては大会前の合宿費や遠征費用が発生する。
Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・全国高等学校総合文化祭(高文祭)
・Drum Corps Japan(DCJ)主催大会 ※WGJ、I&Eを含む
・JAPAN CUP
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・演奏会などの自主公演
大山:地域イベントは、大船まつり、本郷台駅前まつり、藤沢市民まつり、ザ・ヨコハマパレードなどにいつも参加させていただいております。対外的な演奏機会は大会含め出ていきたいと考えています。
Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・本番や大会など対外的なものではなく、資金調達や活動環境の向上など団体内に還元できるもの
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.費用面
大山:物価高騰の影響から活動費用にも影響が出ていますが、生徒の家庭に負担を掛けたくないので、費用面は課題になっています。マーチングをやりたいと望む生徒が金銭面での苦労なく活動できる環境を守っていきたいと考えています。
全国大会も目前に迫る中、今年のショーの見どころを聞いたところ、「ショーが進むにつれて徐々に色づいて華やかになっていく様子」を挙げられていた。プロップのイラストからも回想できるように、女性の一生を描いたショーで、女子校だからこそ取り組めるプログラムと言える。女子校としてのショーが見られるのもあと僅か、これから一つ一つの本番をしっかりと見届けていきたい。