
「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は、和歌山県の紀南地域を拠点に活動する地域バンド『Starfish Band Activities』を紹介する。吹奏楽・マーチングの盛んな地域とは言い難い和歌山県に、小学生から50代までが共に活動する全国でも珍しいバンドがある。発足の経緯や日頃の活動について、代表・監督を務める新谷憲史(しんたに・のりふみ)さんからお話を伺った。

団体正式名称:Starfish Band Activities(スターフィッシュ バンド アクティビティーズ)
団体所在地:和歌山県西牟婁郡上富田町・すさみ町
創設年:2000(平成12)年
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション、カラーガード
※編成詳細は以下の通り
金管:Tp,Mello,Bari,Euph,Tuba
木管:Picc,Cl,Sax(Soprano,Alto)
活動理念:
ミッション:競技マーチングおよび演奏活動を通じて、青少年の豊かな情操を養うことと共に、紀南地方の文化の発展に寄与する
ビジョン:常に高い技術・創造性を持って活動に向き合い、見た人から憧れ・尊敬される人間性を持ったチームであること
Starfish Band Activities(以下、Starfish)は、2000(平成12)年に現代表・監督の新谷氏がすさみ町の地域クラブチームとして発足させた。発足当初は「すさみスターフィッシュ」という名称でスタートした。新谷氏自身もすさみ町出身で、学校のグラウンドで練習する地元の鼓笛隊に興味を持ち、小学生からマーチングを始めたという。兵庫県の大学へ進学した際にJOKERS Drum & Bugle Corpsで二年間活動し、マーチングバンド・Drum Corpsに強い関心を持つようになったという。
新谷:当時すでに21歳を過ぎていましたが、DCI(Drum Corps International)の団体にオブザーバーとして参加したく、様々な団体に連絡したところ、Blue Devilsから快諾いただき、ひと夏帯同させてもらいました。1996年のことでした。当初はマーチングの指導について学びたいという気持ちが強かったのですが、実際に行ってみたら団体運営について関心が湧きました。帰国後は小学校の教員免許を取得して、母校に赴任しました。当時の校長に「マーチングバンド部を発足させたい」と相談したところ、校長から「これからは学校単位ではなく、地域で活動したほうがいい」と言われました。そこで、地元の教育長に相談したら、「地域のスポーツチームはあるが、文化系のクラブはないので立ち上げよう」という流れになり、発足しました。
その後、上富田町との縁をきっかけに、同町の総合型地域スポーツクラブとして活動することになり、2007(平成19)年に現名称へ改称した。上富田町は当時から地域移行が進んでいて、Starfishを活動先として選べるようになったことから、参加者も増えたという。現在は小学1年生から50代までが一緒に活動し、和歌山県の紀南地区の文化活動の担い手として精力的に活動している。

Starfishが活動拠点とする紀南地区は、紀伊半島沿岸の南西部にある。和歌山県内で吹奏楽が活発な和歌山市からはかなり距離があり、過疎化が進む地域なので吹奏楽人口の減少も顕著だ。そんな中で時代に先駆けて地域クラブとして発足したStarfishは、子どもから大人までが参加できる活動の場となっている。
新谷:上富田町・すさみ町の近隣自治体に和歌山南陵高校があるのですが、吹奏楽部が一人だけしかいないという話を聞き、声を掛け、Starfishで一緒に活動しました。2026年は南陵高校の部員も10名に増え、二つの団体がともに手を携えて活動することになりました。
現在のメンバーの約半数が田辺・西牟婁(にしむろ)地域の学生ということもあり、Starfishは南紀エリア、ひいては和歌山のマーチング文化を支える団体となっている。また、近年は和歌山県外から参加するメンバーも増えてきたという。
出演依頼も多く、地域イベントや地元のスポーツ大会、野外フェスティバルでのステージ演奏など、年間10本ほどの本番もあるという。吹奏楽部や吹奏楽団自体が少ないということもあるが、「マーチングといえばStarfishだ」という認識が地域に浸透しているからではないだろうか。上位大会への出場を目指すだけでなく、人前でパフォーマンスする楽しさを知れる・味わえるのがStarfishで活動する意義だろう。

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.メンバーにより異なる
Starfishの参加メンバーは世代・地域ともに幅広いため、「小学校3年生までの子供たちの練習」「地元の子どもたちと大人も参加する練習」のほか、「インバウンド(県外など遠方から参加するメンバー)も参加する練習」といったように、練習回の設定はそれぞれ異なっている
子どもたちは、毎週金曜夜に練習会(子ども+大人)、週末日曜(月1回休みあり)、ローカル練習日があり、インバウンド(県外)は、月1~2回の土日練習(子どもたちも参加)となっている。
※活動状況に応じて社会人も月2回の練習になる場合がある
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.68名(2026年度)
新谷:6歳から53歳までのメンバーが参加しています。小学生28%、中学生14%、高校生9%、大学生10%、社会人39%といった年齢構成です。

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円
月額活動費は、世代問わず一律4千円とかなり良心的価格だ。楽器は無償貸与あり(個人持ち込み可)、パーカッションはスティックのみ個人購入(マレットは貸与あり)、カラーガードはショーで使う手具は基本的に団体が購入してくれる。靴、インナー、手袋などの消耗品は個人購入が必要で、チームジャケットの購入は任意(4千円)とのこと。また、合宿・遠征費は活動状況に応じて別途徴収する場合がある。

Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・マーチングバンド全国大会(M協主催)への出場
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・企業イベント
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・演奏会などの自主公演
・MIX3
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.その他
新谷:うれしいことですが、近年、メンバーが増加してきて、結成当初の仕組みでは、対応できないことも出てきていることが今の課題です。私たちのアイデンティティを大事にしながら、今のバンドの規模や、マーチングのトレンドに合わせた仕組みにアップデートしたいと考えています。
和歌山県は時に「吹奏楽・マーチングバンド不毛の地」と称されることもある。先に挙げたような少子化問題や吹奏楽の盛んな地域の偏りもあるが、学生のうちに本格的に吹奏楽・マーチングに取り組みたいという場合は近隣の大阪に進学してしまうというケースも少なくない。
しかし、Starfishのような幅広い世代が集うバンドというのは全国的に見ても珍しく、むしろStarfishにしかない・Starfishでしかできない活動がある。年齢も居住地も問わず、未経験でも門を叩ける場所がある。
「吹奏楽・マーチングバンド不毛の地」と呼ばれることもある和歌山で、Starfishは確実に根を張り続けている。不毛なのではなく、まだ種が蒔かれていなかっただけなのかもしれない。地域に育てられ、地域を育てるバンドの歩みは、これからも続く。
「Starfish Band Activities」
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