
「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は、愛知県豊橋市を拠点に活動する地域バンド『つつじが丘ジュニアマーチングバンド』を紹介する。スクールバンドから地域移行を果たしたバンドの歩みや、日頃の活動について、音楽監督を務める渡辺徹(わたなべ・とおる)さんからお話を伺った。

団体正式名称:つつじが丘ジュニアマーチングバンド(ツツジガオカジュニアマーチングバンド)
団体所在地:愛知県豊橋市
創設年:2009(平成21)年
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション、カラーガード
※編成詳細は以下の通り
金管:Tp,Mello,Bari,Euph,Tuba
活動理念:①青少年の健全育成、②地域に密着した活動、③高いレベルのマーチングバンドの維持
つつじが丘ジュニアマーチングバンド(以下、つつじが丘MB)のある愛知県豊橋市は、名古屋と浜松の中間に位置し、人口約36万人を擁する東三河地域最大の中核市だ。東海道新幹線をはじめ複数の鉄道路線が集まる豊橋駅を中心に、東西の人・モノ・文化が行き交う「東海道の要衝」として長い歴史を持つ。市内には公立小学校52校・公立中学校22校が整備されており、放課後や週末ごとにスポーツや文化活動に取り組む子どもたちの姿が絶えない。
つつじが丘MBは、豊橋市立つつじが丘小学校でマーチングバンドを指導していた渡辺氏が離任することとなった際、保護者たちが中心となって発足した。初年度は小学校の部活動と連携するかたちでスタートし、翌2010(平成22)年には社会教育団体として独立。学校の枠を超えた活動の場を切り開いた。現在は小学校3年生から中学校3年生までが参加し、マーチングバンド全国大会(日本マーチングバンド協会主催)や、Drum Corps Japan(DCJ)主催大会に出場するなど、精力的に活動を行っている。

部活動の地域移行が慌ただしく進められる中、つつじが丘MBは時代に先駆けて活動を始めていた地域クラブである。設立当初から、運営面は保護者が担当し、専門技術・知識を要するクリエイティブ面は渡辺氏をはじめとするテクニカルスタッフが担当するという「完全分業制」を採用。各々が役割をこなすことで、堅実な運営地盤が形成されてきた。
渡辺:団体の活動理念の一つにも掲げているとおり、「高いレベルのマーチングバンドの維持」を軸に、例年「きっちり練習しないとこなせない難易度」のプログラムに取り組んでいます。活動を続けるうちに、メンバーも指導された内容に取り組むだけでなく、自ら課題を見つけて向き合ったり、映像を見て研究したりするようになりました。近年は愛知県マーチングバンド協会やDCJ(Drum Corps Japan)のインディビジュアルコンテストに自主的に参加するメンバーも増え、卒業後にマーチング強豪校への進学や一般バンドへの加入、DCI(Drum Corps International)への挑戦をするメンバーも出てきました。保護者も、一生懸命マーチングに取り組む子どもたちの姿を間近で見て刺激を受けるのでしょう、運営面で大変手厚くサポートしてくださっています。おかげで指導者もメンバーも、安心して練習に集中できています。
「一人ひとりが真面目にやる」——簡単なようで難しいこの姿勢を長年地道に続けた結果、バンドのレベルは着実に向上し、発足から10年以上が経ったコロナ禍以降、大会などで高い評価を得られるようになった。結果が出るとより一層張り合いが生まれるもので、「もっとマーチングを極めたい」と意欲的なメンバーも増えている。参加者の広がりも顕著で、豊橋市内にとどまらず、過去には静岡県浜松市から、今年度も愛知県瀬戸市から通うメンバーも加わるなど、その輪は広まり続けている。

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週1回(土日どちらかなど)+祝祭日
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
渡辺:活動拠点はつつじが丘小学校の体育館です。30メートル四方の広さには足りないため、大会シーズン前は地域の体育館を借りて練習することもあります。
Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.38名(2025年度、DM2名を含む)
渡辺:小学3年生から中学3年生までが参加しており、小学生と中学生の比率はおおよそ1:1といったところです。小学校から続けているメンバーが多いため、中学生の方が若干多くなる傾向があります。

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.16~20万円 ※活動状況により変動あり
月額活動費は6千円で、遠征費や夏季集中練習時の施設利用費などが主な支出となる。その他の費用の目安は以下のとおり。
ブラス・パーカッション:衣装ジャケットは個人購入、スラックスは団体から貸与。靴・手袋・インナー・Tシャツ・ジャージは個人購入。楽器は無償貸与(個人楽器の持ち込みも可)。パーカッションのスティックは個人購入、マレットは貸与。
カラーガード:衣装・ショー用手具はいずれも無償貸与(一部の手具は個人購入)。

Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・マーチングバンド全国大会(M協主催)への出場
・Drum Corps Japan(DCJ)主催大会 ※WGJ、I&Eを含む
・活動拠点の地域で行われるご当地イベント(お祭りなど)への参加
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・自主事業(コンサートやイベントなど自ら企画し実施するもの)の開催
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.メンバー数
渡辺:「人数の少なさを感じさせないコンテ」を売りにしていますが、もう少し人数が増えたらいいなというのが正直なところです。

つつじが丘MBの強さの源泉は、派手な戦略でも特別な環境でもなく、「一人ひとりが真摯にマーチングと向き合う」というカルチャーが、長い時間をかけて団体の DNA として根付いていることだろう。一朝一夕では手に入らない積み重ねがあるからこそ、いまの好循環がある。
一方で、活動の土台を固める課題も残る。つつじが丘MBが拠点を置く東三河地域は人口・子どもの数ともに決して少なくないが、地域に根付いたプロスポーツチームのジュニアチームやチアをはじめ、文化系の習い事も数多く存在する、いわばレッドオーシャンだ。加えて、マーチングバンドそのものの知名度がまだ高くないという現状もある。
渡辺:まずはマーチングバンドを知っていただくことが出発点だと思っています。大会で結果を出すことはもちろんですが、それと同じくらい、自治体の行事や地域のイベントに積極的に参加して、広く市民の方々に演奏を見ていただく機会を増やしていきたいですね。そうした地道な積み重ねが、活動の輪を広げることにつながると考えています。
多くの団体が「目指すべき姿」として掲げることを、つつじが丘MBはとっくに日常にしている。「当たり前」のレベルが高い団体は強いということを、取材を通じて改めて実感した。この地道な積み重ねがこれからどんな景色を見せてくれるのか、今後の活躍がますます楽しみだ。
「つつじが丘ジュニアマーチングバンド」
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