「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は、テレビ番組で特集されたことなどから全国のお茶の間に知られるようになった『神村学園中等部高等部吹奏楽部』を紹介したい。全日本吹奏楽コンクールや全日本マーチングコンテスト(いずれも全日本吹奏楽連盟主催)で多くの結果を残しており、テレビ番組の影響もあって座奏の印象が強いが、実は日本マーチングバンド協会主催の大会にも出場している。
今回は2025(令和7)年1月26日(日)に高崎アリーナで開催された「第8回カラーガード・マーチングパーカッション全国大会」の出場時に密着取材を行い、解体新書特別編としてお送りする。
団体正式名称:神村学園中等部高等部吹奏楽部(カミムラガクエンチュウトウブコウトウブスイソウガクブ)
団体所在地:鹿児島県いちき串木野市
創設年:吹奏楽部の創部は昭和50年代、マーチングは1998(平成10)年から活動している
団体の編成:ブラス(※1)、パーカッション、コントラバス
※編成詳細は以下の通り
木管:Fl、Picc、Cl(B♭、Es)、Ob、Fg、Sax(Alto、Tenor、Bariton)
金管:Tp、Hr、Tb、Euph、Tuba(マーチングではスーザに持ち替え)
活動理念:やればできる 必ず出来る 絶対出来る 「やかぜ」の精神
神村学園中等部高等部は1956(昭和31)年に創立された共学の私立学校である。附属幼稚園、初等部、中等部、高等部、専修学校があり、高等部はスポーツの強豪校として知られている。特に男子・女子硬式野球部、男子・女子サッカー部、女子ソフトボール部、女子駅伝部は全国大会優勝レベルで知られ、多くのプロスポーツ選手を輩出している。
吹奏楽部は昭和50年代に発足した。当時は座奏のみだったが、「部員全員で新しいことに挑戦したい」ということで1998(平成10)年からマーチング活動で大会に出場するようになった。現在は部員数が増えたためマーチング参加は希望制となっている。
神村学園では、座奏の楽器パートは固定だが、マーチングの場合は希望制ということもあり、座奏時とは異なる楽器に挑戦することができる。また、カラーガードについては原則常設しておらず、こちらも希望した部員が参加する。「原則」としているのは、2024年(令和6)度は3名のカラーガード専任メンバーがいるためだ。
神村学園の吹奏楽部は中・高合同のため最長で6年間の活動期間となるが、中1でカラーガードを経験する生徒もいれば、高3になって初めて挑戦するという生徒もいるという。そのため、カラーガードは毎年学年も経験値も異なるメンバーで構成されている。
さらに、カラーガードの練習は期間限定で、朝練の1時間のみ。それも九州予選前とCG全国前の期間限定の合計2か月程度と極めて限定的である。それでもしっかり結果を残しているのは、自分でやると決めたのだから、言い訳はせずにやりきるという「自己責任」に基づいている。できない・やれないとは言わず、「やかぜ」の精神が活かされているのだ。なお今回のショーは、木管楽器と金管楽器、コントラバス、カラーガード専任メンバーの33名が力を合わせてショーを創り上げている。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.吹奏楽部は放課後毎日、カラーガードのみ期間限定
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い
部員のほとんどが鹿児島県内からだが、九州からは宮崎県、福岡県、大分県、熊本県、長崎県もいるとのこと。その他の地域では東京都、三重県、高知県、大阪府などの部員もおり、過去には小豆島や淡路島出身の部員もいたとのこと。遠方から入部する生徒は、これまでは親族が鹿児島在住であるなど土地に縁のある場合が多かったが、近年はテレビの影響もあり国内留学を志してやってくる部員も増えている。また、部員は寮生と通学生が半々とのことだった。
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.98名(2024年度)
吹奏楽部全体としては98名で、そのうち中学生が4名在籍している。今回のCG・MP全国大会に出場したのは33名で、そのうち中学生は1名だった。
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
先述の通り、座奏は入部時に決定した楽器パートを固定して担当するが、マーチングとカラーガードについては希望制となっている。なお、吹奏楽経験者の入部はあってもマーチングの経験者はおらず、美しい姿勢づくりという基礎から始めるそうだ。
Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・全日本吹奏楽連盟(吹連)主催大会
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・企業イベント
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・他の部活動の応援演奏(甲子園など)
・演奏会などの自主公演
Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・カラーガード・マーチングパーカッション全国大会(M協主催)への出場
・全日本マーチングコンテスト(吹連・朝日新聞主催、通称:パレコン)への出場
・活動拠点の地域で行われるご当地イベント(お祭りなど)への参加
・テーマパークやスポーツイベントなどへの出演
・自主事業(コンサートやイベントなど自ら企画し実施するもの)の開催
・本番や大会など対外的なものではなく、資金調達や活動環境の向上など団体内に還元できるもの
今回の大会取材の際、カラーガードの専任メンバーと兼任メンバー2名から直接お話を伺った。カラーガードに挑戦する意義ややりがいなど、等身大のコメントを紹介したい。
中間遥斗(なかま・はると)さんは、高校1年生のカラーガード専任メンバー。「練習が大好き」という中間さんは、全日本ジュニア優勝や、中学3生で出場した世界バトントワーリング選手権大会にてスリーバトンの部で2位、アーティスティックトワールの部で5位という素晴らしい成績を収めている。
中間「神村学園には中学から入学し、カラーガードは入部と同時に始めたので歴4年目になります。母がバトンの先生だったこともあり、物心つく前からバトンをやっていました。現在もバトンの大会に出場しています。バトンは軽いので初心者でも技に挑戦しやすいですが、カラーガードは手具が大きく難しいことも多いです。その分、カラーガードはダイナミックで演技に華を添えられる存在だと思います」
堀之内萌衣(ほりのうち・めい)さんは高校3年生。神村学園には高校から入学し、吹奏楽部に入部。中学校でも吹奏楽部に所属し、トロンボーンを担当していた。現在もトロンボーンとカラーガードの兼任メンバーとして活動している。
堀之内「神村学園ではトロンボーンとカラーガードとして、吹奏楽コンクールやパレコン、CG・MP全国大会それぞれ全てに出場しています。カラーガードとトロンボーンは全く違うパートとは考えず、どちらも等しく『音楽に取り組んでいる』と思っています。私は不器用なので両立は難しいのですが、時間をうまく使ってどちらの練習にも取り組んでいます。手具だけでなく、全身と表情を使って表現して、観る人に感動を与えられることがカラーガードの魅力だと思います」
今回のCG・MP全国大会参加の様子を特別密着動画として公開いたします! 動画内にはウォームアップエリアの様子や本番ダイジェスト映像も収録されています。本記事と併せてぜひご欄ください!
「神村学園中等部高等部吹奏楽部」
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