【マーチングバンド解体新書】35年連続36回全国大会出場の超名門「埼玉栄中学・高等学校マーチングバンド」強さの秘密に迫る

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回は、マーチングファンにとっては言わずと知れた強豪校であり、かねてから取材要望の声が多く寄せられていた『埼玉栄中学・高等学校マーチングバンド』を紹介する。顧問の須永隆(すなが・たかし)先生をはじめ、部員の皆さんのご協力を得て練習の様子を取材させていただき、事前に募集した読者からの質問にもお答えいただいた。本連載の60本目の節目ということもあり、取材時の撮りおろし写真や動画を含めた特別版としてお届けする。

※取材日は2026年3月下旬

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埼玉栄中学・高等学校マーチングバンドについて

団体正式名称:埼玉栄中学・高等学校マーチングバンド(サイタマサカエチュウガク・コウトウガッコウマーチングバンド)
団体所在地:埼玉県さいたま市西区
創設年:1973(昭和48)年から吹奏楽部活動の一環としてマーチングバンドに取り組み、1982(昭和57)年4月からマーチングバンド部として完全に独立
団体の編成:ブラス、パーカッション、カラーガード
編成詳細は以下のとおり
金管:Tp(Cort含む),Mello,Baritone,Euph,Tuba
打楽器:SD,TD,BD,F.Pit

活動理念:部訓 「集団美・そして感動!」

埼玉栄中学校・高等学校(以下、埼玉栄)は、1972(昭和47)年に開設された私立の共学中高一貫校で、約3,000名の生徒が在籍している。東京ドーム約14個分という広大な敷地内には、校舎のほか各部活動の専用施設や校内コンビニまでもが完備され、まるで大学のような環境が整っている。部活動が盛んなことで知られており、高等学校の67の部活動のうち、19の部が令和7年度に全国大会優勝を収めた。マーチングバンド部もそのうちの一つで、これまでマーチングバンド全国大会に35年連続36回出場を果たし、グランプリ・文部科学大臣賞を7回獲得している。吹奏楽部も全日本吹奏楽コンクール常連の強豪として知られるが、吹奏楽部とマーチングバンド部はそれぞれ独立した別の部活として活動しており、顧問や部員だけでなく、楽器も練習内容も練習場所も完全に分かれている。
なお、創部時は高等学校のみだったため「埼玉栄高等学校マーチングバンド」という名称だったが、併設の中学校が開校したことから、2002(平成14)年度より現在の名称(埼玉栄中学・高等学校マーチングバンド)に改称された。

須永:教員として着任した当初は吹奏楽部の活動の一環としてマーチング活動を行っていましたが、マーチングの振興と発展のため、当時の校長の後押しもあって吹奏楽部からマーチングバンド部を独立させました。その際、吹奏楽部はウインドオーケストラとして、マーチングバンドはコースタイルとして編成し、それぞれの専門性を高めることを目指しました。マーチングバンド部は独立当初3名で始まりましたが、今では大編成として活動できています。

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週3日以上(平日放課後)+土日どちらか

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内

須永: 練習は平日の放課後と土日どちらか(シーズンによって異なります)で、週に1日は休みを設けています。屋内の専用練習場では分奏・合奏やストレッチのほか、ちょっとしたMMの練習も行います。ドリルの練習はグラウンドで実施しており、陸上部のご厚意により共用させていただいています。大会前には地域の体育館を使用することもあり、校内の体育館も年に数回ではありますが活用しながら、限られた時間を有効に使うよう心がけています。

2.メンバーについて

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.124名(2025年度、DM・SDM含む)

須永:2025年度は中学生5名と高校生119名の合計124名で、そのうち寮生が6名おりました。部活動が盛んな学校なので、地方出身の生徒は珍しくありません。マーチングでは、東北、東海、関西、九州、沖縄などから進学してきた生徒がおりました(※)。

ちなみに卒業後もマーチングを続ける生徒も一定数おり、関東地区の一般団体に加入したり、奈良学園大学やIPU・環太平洋大学へ進学してマーチングを続けるケースも多いそうだ。

※部員の出身団体については、大仙市立大曲中学校(秋田県)、さいたま市立大宮西中学校、春日部市立春日部中学校、春日部市立豊野中学校、越谷市立中央中学校、越谷市立平方中学校、新座市立第四中学校、川口市立幸並中学校(いずれも埼玉県)、野田市立南部中学校、野田市立東部中学校、野田市立岩名中学校、専修大学松戸中学校、船橋市立法田中学校、光英VERITAS中学校(いずれも千葉県)、足立区立第十一中学校、第十四中学校、中央区立日本橋中学校(東京都)、横浜市立西谷中学校、綾瀬市立綾北中学校、綾北”Mercury winds”、鎌倉市立第二中学校(いずれも神奈川県)、静岡市立袋井南中学校(静岡県)、富山市立奥田中学校(富山県)、橿原市立八木中学校(奈良県)などが挙げられた。
そのほか、小学校までスクールバンドに所属していて、中学では一般団体やカラーガードチームに所属し、埼玉栄の高等部へ進学して入部する生徒も少なくないそうだ。


3.実際に加入するためには

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

須永:マーチングのために本校へ進学する生徒もおりますが、部員の半数はマーチング未経験でのスタートで、吹奏楽経験者でもマーチングは未経験という生徒も多くいます。新入学生向けの部活動紹介のオリエンテーションをきっかけに入部する生徒も少なくありません。中学まで野球部、サッカー部、バスケ部だったという元運動部の生徒も活躍しています。

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.21~25万円

部費は年額6万円(月5千円)で、衣装のインナー、手袋、靴、Tシャツ、ジャージなどの消耗品については個人での購入が必要だが、楽器・衣装・手具はすべて無償貸与(個人購入や持ち込みも可)。また、楽器の修理費用も部で負担するとのこと。そのほかに発生する費用は校外施設を使用する際の施設利用費で、前述のとおり、校内の練習環境が限定されているため生じる出費となっている。なお、大会出場の際の遠征費については、支部大会以上の場合は学校負担(※)だ。

※学校方針により、関東大会以上はどの部活動も遠征費は学校負担

Q.その他、活動参加に際し必要な条件があれば教えて下さい
A.各自で健康管理に努めること

練習中の部員たちは皆マスクを着用していたのだが、埼玉栄では、インフルエンザ予防の観点から、コロナ禍以前からマスク着用を呼びかけていたという。

須永:健康管理は活動の基本のようなものだと考えています。体調不良を理由に練習や本番に穴を開けないというのはもちろんなのですが、健康管理をきっかけに自己管理が周りに及ぼす影響について考えるようになり、そこから「相手を思いやる心」を養った生徒をたくさん見てきました。百人以上いる部員が一致団結するためにも、健康管理は必要不可欠なことなのです。

今回の取材日(2026年3月下旬)は「『blast ブラスト!』 presents SPRING CONCERT 2026」に向け、新高2・高3を中心に練習が行われていたが、合間を縫って部員の皆さんに読者から寄せられた質問に答えていただいた。撮りおろしの練習風景とともに、普段では見られない部員たちの生の声をぜひ動画でお楽しみください!

日頃の活動や今後について聞いてみました

Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・全日本吹奏楽連盟(吹連)主催大会
・JAPAN CUP
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・企業イベント
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・他の部活動の応援演奏(甲子園など)
・演奏会などの自主公演
・記念イベントへの招待演奏(小・中学校などの学校団体、国・県・市町村などの自治体)

Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・カラーガード・マーチングパーカッション全国大会(M協主催)への出場
・Drum Corps Japan All Japan Championships(DCJ主催)への出場

今回の取材にあたり、読者アンケートやメッセージを募集したところ、「定期演奏会を開いてほしい」という要望が多数寄せられた。これについて須永先生は、「50年前に吹奏楽部の顧問へ就任した際に第1回定期演奏会を立ち上げた経緯もあり、今年からは学内・保護者・卒業生向けの披露にとどまらず、広く一般にも公開していきたい」と語った。
なお、部内イベントの様子は、部のホームページでも紹介されているので、気になる人はぜひチェックしてみてほしい。

また、埼玉栄は全国大会で二大会連続グランプリを獲得したため、大会規定により2026年度は競技出場ではなく特別演奏演技(招待)での出演となる。コンテスタントとしてではないシーズンに臨むにあたり、その意気込みや心境を伺った。

須永:招待だからこそ、観る人すべてが納得するようなものをやらなくてはと思っています。基礎・基本を徹底し、規約を厳守したショーをお見せしたいと考えています。

強さの源は「環境」にあり

埼玉栄と聞くと、厳しい練習や有名校出身者が大半を占めるイメージを持つ人も多いのではないだろうか。しかし実際には部員の半数がマーチング未経験からのスタートで、取材時の練習もリラックスした雰囲気のなか、伸び伸びと楽しむ姿が印象的だった。

今回の取材を通じて、強さの要因は「環境」にあるように感じられた。特別な練習設備や選りすぐりのメンバーがいるわけではない。むしろ練習環境は一般的な都市部の学校と大差なく、部員の半数はマーチング初心者だ。他の学校と大きく違う点は、多くの部活動が全国大会レベルという日常のなかで、生徒たちは他の部活の躍進を間近に見ながら刺激を受け続けるということだ。「努力の先に何があるか」を自然と肌で感じられる環境は、個々のモチベーションや部全体の向上心をつくり出しているのだろう。強豪校だから強いのではなく、埼玉栄という場所でしか生まれない空気が、彼らを育てているのではないだろうか。

2026年度は大会規定により特別演奏演技(招待)での出演となるが、須永先生の「観る人すべてが納得するものを」という言葉通り、そのステージがどんなものになるのか、今から楽しみである。

「埼玉栄中学・高等学校マーチングバンド」

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