【マーチングバンド解体新書】「埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部」のマーチング練習に潜入取材

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回は、吹奏楽ファンなら知らない人はいない『埼玉県立伊奈学園吹奏楽部』のマーチング活動について取材させていただいた。特色のある校風と実績豊富な活動内容について宇畑知樹(うばた・ともき)先生と関口裕仁(せきぐち・ゆうと)先生にお話を伺い、マーチングコンテスト組の練習風景や生徒たちの声も伝えていきたいと思う。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

※取材日は2022年7月下旬

埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部について


団体正式名称:埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部(サイタマケンリツ イナガクエンソウゴウコウトウガッコウ スイソウガクブ)
団体所在地:埼玉県北足立郡伊奈町
創設年: 1984年
団体の編成:マーチング時の編成はブラス、パーカッション(※1)、カラーガード(※2)
※1 楽器編成の詳細は以下の通り
木管:Fl、Picc、Cl(B♭管、Bass Cl)、Sax(Sop、Alto、Tenor、Bariton)
金管:Tp、Hr、Tb、Euph、Sousa
打楽器: SD、TD、BD、Cym、Glock
※2 マーチング活動時のみで常設パートではない
活動理念:音楽しよう」

埼玉県立伊奈学園総合高等学校(以下、伊奈学)は1984年に創立した男女共学の県立高校で、全国でも珍しい総合選択制(※)を導入している。2003年に伊奈学園中学校が開校し、一部中高一貫校となった。高等学校のみの生徒数が男子1015名・女子1326名(2021年4月現在)が通うマンモス校だ。

※入学時に選択したコースに分かれて専門的な学習を行う。時間割は生徒自身で決定し組み立てるため、大学のような学校生活となる。

学校紹介|埼玉県立伊奈学園総合高等学校

吹奏楽部は開校と同時に創部されており、これまでに全日本吹奏楽コンクール22回連続出場(金賞13回受賞)、全日本マーチングコンテスト出場(金賞受賞)、全日本アンサンブルコンテスト(最優秀賞受賞)など、素晴らしい結果を収め続けている超強豪校である。また、第15回環太平洋音楽祭に出場(グランプリ受賞)、第27回ウィーン国際青少年音楽祭に招待出場(ウィーン大賞:グランプリ受賞)など海外の大会でも高い評価を得ている。
その他、Eテレ「みんなのうた」などのテレビ出演や、ヨーロッパ(オーストリア、スイス)やアメリカ(ハワイ、フロリダ)など海外での演奏活動も行なっており、年間2万人以上の観客の前で演奏を行うなど、大会以外の演奏活動も積極的に行っている。

他の団体にはない「伊奈学ならでは」なエピソード

伊奈学の特色の一つに挙げられるのが部員数の多さだ。夏以降は吹奏楽コンクール組とマーチングコンテスト組に分かれての活動を行っているとのこと。2022年度は220名が在籍しており、コンクールに139名(Aの部に55名、Dの部に84名)マーチングコンテストに81名が取り組み練習に励んでいる。

関口:「マーチング組は『マーチングをやりたい』と志願して参加しているメンバーで構成されています。マーチングメンバーは夏からはマーチング練習のみで、11月からは部全体の活動になります」

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.平日全て(授業終了後)

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内

2.メンバーについて

Q.所属メンバーの居住地について
A.団体所在地「内」の都道府県から通っているメンバーが多い

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.220名(2022年7月現在)

Q.新規加入者は例年何名くらいいますか?
A.50名以上

Q.退団者(シーズン途中を含む)は例年何名くらいいますか?
A.~10名

3.実際に加入するためには

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

関口:「吹奏楽部に入部する生徒は9割近くが楽器経験者ですが、マーチング経験者はほとんどいません。マーチングメンバーの7~8割がマーチング未経験でのスタートです」

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.特になし

コロナ禍での活動について聞いてみました

Q.【コロナ1年目】2020年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ2年目】2021年度の活動はどのように行いましたか?
A.練習を行い、大会にも参加した(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.【コロナ3年目】2022年度の活動はどのように行う予定ですか?(項目に該当しない場合は記述をお願いします)
A.練習を行い、大会にも参加予定(オンライン参加や、任意のメンバーのみで行うアンサンブル等も含む)

Q.コロナ禍で困っていることは何ですか?
A.
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・練習回数や大会の減少による影響で演奏演技の技術が低下した

Q.コロナ禍で活動する意味をどのように考えていますか?
A.生徒が活動する機会をなくさないようにしたい(宇畑)

また、マーチングの指導に当たる関口先生はこのように話してくれた。

「コロナ前は観客がいることが当たり前で、観客を楽しませること=自分たちの楽しさといった形でのやりがいを感じていた生徒も多かったと思います。コロナ禍で観客がいない本番もあったことから、『楽しさ』の意味そのものを見直す機会になったと思います。生徒たちにはマーチングを通じて『辛い練習を乗り越えて得られる楽しさ』を見出してほしいです」

 

伊奈学マーチングの現役メンバーに直接聞いてみました

2022年8月23日(火)開催予定の『第35回埼玉県小学生バンドフェスティバル&埼玉県マーチングコンテスト』に向け、練習に励む現役メンバーから話を伺った。

栗原碧葉(くりはら・あおば)さん
所属パート:ドラムメジャー、以前はTb
マーチングはいつから?:高校(吹奏楽は小学生から。当初はEuphを担当)
学年:3年生

栗原:「吹奏楽をやりたくて伊奈学に進学しました。マーチングは一体感を感じられるところが好きです。ドラムメジャーとしての役割を果たし、会場にいる方全員に私達の音楽を届けたいです」

志潟あかり(しがた・あかり)さん
所属パート:打楽器、マーチングはCym
マーチングはいつから?:中学校から
学年:3年生(部長)

志潟:「春日部中学校吹奏楽部チャレンジャーズでマーチングをやっていて、マーチングをやりたくて伊奈学に進学しました。私はマーチング経験者なので、高校からマーチングを始めたメンバーは練習が大変だと感じていると思いますが、マーチングの良さや醍醐味を伝えていきたいです」

ドラムメジャーの栗原さんは「大阪城ホールで大きな花を咲かせたいんです」と目標を語ってくれた。これは、2022年のショーのテーマが『花』だということを関口先生が教えてくれた。大半がマーチング初心者という中でパレコン全国を目指す伊奈学だが、努力の種が芽吹き、美しい花となって咲き誇ることを期待している。

「埼玉県立伊奈学園総合高等学校吹奏楽部」

▶︎Website

keyboard_arrow_up

Pearl