【第53回マーチングバンド全国大会】初出場&カムバックの5団体にクローズアップ

まもなく開催される第53回マーチングバンド全国大会(日本マーチングバンド協会主催)。今大会は2日間合計で99団体(小学生の部30団体、中学生の部19団体、一般の部20団体、高等学校の部30団体)が出場予定となっている。本記事では、全国大会に初出場する団体と、カムバックを果たした全5団体を紹介する。マーチングバンドを観始めたばかりの人にとっては馴染みの薄い団体もあるかもしれないが、本記事を通じてそれらの団体を知ることで、大会観覧の楽しみが増すことを願っている。

創設11年目での初出場!地域で育てたバンドの快挙 富谷市立明石台小学校金管バンド(宮城県・東北支部)

団体名称:富谷市立明石台小学校金管バンド(トミヤシリツアカイシダイショウガッコウキンカンバンド)
所在地:宮城県富谷市
創設年:2015(平成27)年
出場部門:小学生の部 小編成(大会1日目、小学生の部15団体目)

最初に紹介するのは「富谷市立明石台小学校金管バンド(以下、明石台小)」だ。今年度は3年生から6年生までの32名が活動している。富谷市を拠点に活動するとみやマーチングエコーズや、富谷吹奏楽団、富谷市と包括連携協定を結ぶ仙台大学などと連携して練習を重ねてきた団体だ。部活動の地域移行によりマーチングバンドを取り巻く環境が変動する中、地域一体で育ててきたバンドが快挙を果たした。

ショータイトルは【Over The SEA】。見る人の心に雄大な海の情景が思い浮かぶような、息の合ったサウンドとパフォーマンスを目指している。海を表現する上でサウンドづくりにこだわっており、日の出の海をイメージした明るい音色や、夜の海をイメージした静かで穏やかなハーモニーなど、雰囲気の違いは見どころ(聴きどころ)だ。また、カンパニーフロントでは雄大な海の迫力を表現しており、32名がフロアいっぱいに描き出す大海原を感じてほしい。

担当の栃久保育子(とちくぼ・いくこ)先生は、「全国大会に出場でき、嬉しい気持ちでいっぱいです」と喜びの気持ちを語ってくれた。

栃久保:これまでたくさんの方々にご指導いただき、音色やハーモニー、動きが揃った時の美しさとうれしさを求めて日々練習を重ねてきました。私たちの演奏を聴いてくださる皆さんへ「感謝と笑顔」を届けられるよう、メンバーみんなの心を一つにして頑張ります。力を合わせて、心を込めて演奏・演技します!

創設からでは31年ぶり二度目、現体制では初出場!五戸町立五戸小学校金管バンド部(青森県・東北支部)

団体名称:五戸町立五戸小学校小学校金管バンド(ゴノヘチョウリツゴノヘショウガッコウキンカンバンドブ)
所在地:青森県五戸町
創設年:1974(昭和49)年頃創設、2023(令和5)年に地域移行し現体制へ
出場部門:小学生の部 小編成(大会1日目、小学生の部18団体目)

次に紹介するのは「五戸町立五戸小学校金管バンド(以下、五戸小)」だ。50年以上の長い歴史を持つ団体で、1995年1月開催の『第22回マーチングバンド全国大会』に出場しているが、現体制になってからは初の全国大会出場である。長いことマーチングバンドを見続けてきた人であれば、「五戸」という名にピンと来た人もいるかもしれない。それもそのはず、かつて五戸町立南小学校マーチングバンドという団体が全国大会に複数回出場していた(なお、南小学校は2014(平成26)年に五戸小に統合されている)。五戸小は2023(令和5)年に学校部活動から地域移行し、一般マーチングバンドのTURN BACKに指導協力を仰ぎながら、保護者主体で団体運営を行っている。

今回のショーは、『ハリー・ポッター』をテーマにした【Welcome to Wondrous World !】。ホグワーツの生徒になった部員が繰り広げるスペクタクルアドベンチャーだ。メンバー皆で何度も映画を見て、楽曲や場面の情景を考察し、自分たちが表現できる演技を探求したという。

冒頭は薄暗い街灯の光をグロッケン・マリンバで奏で、トランペットソロで魔法界の空気感を表現する。ファーストプッシュで壮大な世界観を描き、ホグワーツの生徒が光る杖で魔法をかけ、魔法戦争の戦いをチェーンフラッグで象徴的に演じる。終章は戦いの後に輝く世界をカラーのフラッグと演奏で表現し、最大の見せ場カンパニーフロントへと繋ぐ。ラストはホグワーツの寮のパネルと金のスニッチをあしらったフロアシートでショーを華やかに締めくくる。

団体長の山部義尚(やまべ・よしひさ)さんは、「ハリーポッターの世界観を、会場の皆さんと一緒に楽しみながら精一杯演奏・演技したい」と話してくれた。

山部:念願の全国大会出場という事で、緊張を感じつつも大変光栄に感じています。この大会で最高のパフォーマンスを発揮するために、部員、指揮・指導者、保護者が一丸となって取り組んでおり、たくさんの方の前で演奏・演技ができることをとても楽しみにしています!

激戦区の関東支部を勝ち抜き2008年以来17年ぶりの出場!MARCHING BAND COURAGE(茨城県・関東支部)

団体名称:MARCHING BAND COURAGE(マーチングバンドクレージュ)
所在地:茨城県笠間市
創設年:1993(平成5)年
出場部門:一般の部 小編成(大会2日目、一般の部1団体目)

2008(平成20)年の『第36回マーチングバンド・バトントワーリング全国大会』以来17年ぶりに全国大会出場を決めた「MARCHING BAND COURAGE(以下、COURAGE)」は、茨城県笠間市を拠点に活動する一般団体で、現在は中学1年生から48歳までが在籍しており、前回の全国大会を知るメンバーも、2008年当時はまだ生まれていなかったというメンバーもいるという。

>2008年(第36回マーチングバンド・バトントワーリング全国大会)の大会結果はこちら

今回のショータイトルは【Look at Me〜To the Stage of Dreams〜】。孤独の中で生きてきた少女が、あるショーとの出会いをきっかけに心を奪われ、スターになることを夢見るように。悩み、苦しみながらも努力を重ね、少しずつ成長していく物語である。はじめは誰からも相手にされなかった少女が、次第に周囲に認められ、最終的にはスターとして憧れの「夢の舞台」に立つ――まるで全国大会という夢の舞台へカムバックを遂げたCOURAGEと重なるストーリーだ。

COURAGEのバンドディレクターを務める望月恭輔(もちづき・きょうすけ)さんは、「17年ぶりの全国大会、私たちにとっての夢の舞台。 観てくださる皆様の心に響く演奏演技ができるよう精一杯頑張りますので、どうか温かい応援よろしくお願いします!」と意気込んだ。

2002年の日本武道館以来23年ぶりの出場!加藤学園高等吹奏楽部 Blue Wings(沼津市・東海支部)

団体名称:加藤学園高等学校吹奏楽部 Blue Wings(カトウガクエンコウトウガッコウスイソウガクブ ブルーウィングス)
所在地:静岡県沼津市
創設年:1980(昭和55)年
出場部門:高等学校の部 小編成(大会2日目、高等学校の部1団体目)

次に紹介するのは、2002(平成15)年の『第30回マーチングバンド・バトントワリング全国大会』以来23年ぶりに全国大会出場を決めた「加藤学園高等学校吹奏楽部 Blue Wings(以下、カトガク)」。前回出場時の大会会場は日本武道館で、当時は1月中旬に開催されていた。

>2002年(第30回マーチングバンド・バトントワーリング全国大会)の大会結果はこちら

今回のショータイトルは【FUJI ROCK JAPAN】、「和とロックの融合」をテーマに構成されている。ショー冒頭から有名なドラムのリズムが登場するが、ただのロックではなく、和風の要素と組み合わせた独自の音楽観を演出する。誰もが知る和のフレーズも散りばめられており、新しい和風ロックの世界観を楽しんでいただきたい。また、タイトルの「FUJI」は富士山を指し、カトガクのある沼津市では毎日美しい富士山が見えることから、皆の精神的支えとして存在しているという。楽曲の中では朝から夜までの富士山の描写が含まれているので、富士山を思い浮かべながらの鑑賞がおススメだ。

部長を務める前島龍ノ介(まえじま・りゅうのすけ)さんは、全国大会にかける想いを次のように話した。

前島:私たちは「コツコツが勝つコツ」をモットーに、日々の練習を大切にし、一歩ずつ着実に上達することを心がけて取り組んでいます。多くの学校と同じく、私たちの学校もグラウンドや体育館の使用がほとんどできない状況でした。ですが、細かい楽器の動作やターンや姿勢などにこだわり、環境に左右されることなく、今できることに全力で取り組んできました。実に23年ぶりの全国大会出場となり、ほぼ初出場のようなものですが、23年間の思いを込めて、会場を熱く盛り上げたいと思っています。熱い声援をどうぞよろしくお願いいたします!

SSAのフロアに立つのは2015年以来、10年ぶりの出場!福岡県立北筑高等学校吹奏楽部(福岡県・九州支部)

団体名称:福岡県立北筑高等学校吹奏楽部(フクオカケンリツホクチクコウトウガッコウスイソウガクブ)
所在地:福岡県北九州市
創設年:1985(昭和60)年
出場部門:高等学校の部 中編成(大会2日目、高等学校の部16団体目→中編成9団体目)

最後に紹介するのは、2015(平成27)年の『第43回マーチングバンド全国大会』以来10年ぶりにさいたまスーパーアリーナに帰ってくる「福岡県立北筑高等学校吹奏楽部(以下、北筑)」。コロナ禍のためオンライン開催となった2020(令和2)年(第48回マーチングバンド全国大会~e-Marching Special Edition 2020~高等学校の部)にも出場しているが、さいたまスーパーアリーナのフロアに立つのは10年ぶり14回目となる。

>2015年(第43回マーチングバンド全国大会)の大会結果はこちら
>2020年(第48回マーチングバンド全国大会~e-Marching Special Edition 2020~高等学校の部)の大会結果はこちら

今回のショータイトルは【Edison Lab. ~発明王のキセキ~】。偉大なる発明王、エジソン・トーマスの生涯をマーチングによって表現する。エジソンが発明した電球が生み出す光により、世界は明るく輝き、蓄音機から音楽が流れ、映写機によって思い出を色鮮やかに楽しめるようになった。その『奇跡』の発明と、『軌跡』の積み重ねが未来へとつながり、今の私たちの笑顔がある――そんな、エジソンへの敬意の想いが込められたプログラムだ。シーン毎に登場するしたフラッグのデザインや、精巧に作られた発明品の模型にも注目してもらいたい。

顧問の池田仁史(いけだ・ひとし)先生は、九州大会で「(全国大会出場推薦を受け)まだ信じられない、本当によかった」と目を潤ませながら、生徒や保護者、OB・OGたちの輪の中で喜びを分かち合っていた。

池田:本校が最後に全国大会に出場させていただいたのは5年前(2020年)でした。コロナ禍のため動画審査という形式でしたが、貴重な経験でした。さいたまスーパーアリーナでの全国大会は10年ぶりとなります。久しぶりの全国の舞台に臆することなく、日々積み上げてきた練習の成果を存分に発揮できるよう頑張ります。これまで支えてくださったすべての皆様への感謝を胸に、私たちらしい『発明王のキセキ』を表現しますので、どうぞお楽しみください!

おわりに

今大会には、記事で紹介した団体のほかにも初出場やカムバックを果たした団体があるので、観覧予定の方は開催までにチェックしてみてほしい。現地で観覧予定の方は、ひいきの団体だけでなく、夢を叶えてフロアに立つすべてのプレーヤーに向けて熱い声援と惜しみない拍手を送ってもらいたい。

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