連載コラム【マーチングと共に】#5現在と未来への想い 最終回に寄せて(竹村憲夫)

5回にわたってお届けしてきた本コラムも、いよいよ最終回を迎えました。連載を振り返るにあたり、まずはこれまで私のマーチング人生を支えてくださったすべての方々へ、心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

>連載コラム【マーチングと共に】 過去記事はこちら

感謝の想いとマーチング指導者への願い

優柔不断な私が今日までマーチングに関わり続けることができたのは、これまで述べてきたとおり、ただ人との出会いと、その助けに恵まれたおかげです。失敗し、悩み、孤独や悲しみに暮れた時も、多くの先生方、諸先輩方、そして後輩たちが励ましや助言をくださいました。そのおかげで、さまざまな困難を乗り越えることができました。本当に幸運なマーチング人生であったと、改めて心から感謝しています。

現在も役員や大会の審査員を務めさせていただくなかで、新しい審査員の先生方や次世代のマーチングリーダーたちと出会い、お話しする貴重な機会をいただいています。お目にかかるすべての方が、日本のマーチングに強い思いを抱き、真摯に活動されている様子を伺うたび、この世界の広がりに感動し、将来への安心感を覚えています。

楽器・表現・手具・造作物など、さまざまな要素が組み合わさるマーチングという総合芸術は、演じる側と観る側が一体となって楽しめる、さらに魅力的なものへと進化してきました。クリエイターの方々の豊かな想像力と企画力、そして多くの経験を積んだ優秀な指導者の皆様が活躍されることで、日本のマーチングバンドの技術は目覚ましい勢いで向上しています。これは、関係するすべての皆様の尊いご努力の賜物だと強く感じています。

今後も指導者の皆様には、常にプレイヤーを支え、自信を与え、協働する楽しさや仲間の大切さ、人を思いやり慈しむ心を土台に、目指す作品の完成に向けてご指導をお願いしたいと思っています。

協働と相互理解、そして敬意の必要性

日本のマーチングをさらに発展させていくためには、協力と相互理解が欠かせません。それぞれの立場や考え方のもとで活動やチャレンジが続けられるなか、何よりも参加団体の皆様が不利益を被ることのないよう、団体を代表する私たちが同じ未来を見据えながら理解し合い、それぞれの独自性を活かして協働していく必要があります。

意見をまとめ、共通の目標に向かう過程では、時に強いリーダーシップが求められます。しかし、強い思いは気づかぬうちに他者を抑え、傷つけてしまうこともあるかもしれません。信念と横暴、信頼と服従は決して同じではありません。過去には、辛く悲しい思いをされた方もいらっしゃることでしょう。そのようなことは二度とあってはならないと、私は自らを省みながら強く心に誓っています。

また、大会運営を成功に導くためには、誘導、受付、会場案内、審査、演出、大会事務など、実に多岐にわたる業務を年間を通して支えてくださっている多くのボランティア(係員)の方々の存在が欠かせません。大会に臨む際は、皆さんが全力を発揮できる舞台を整えてくださっているこうした方々への敬意を、ぜひ心に留めていただければと思います。

大会前は緊張や不安を感じることもあるでしょう。それでも、お互いを素晴らしいマーチングの世界を共につくり出す仲間として尊重し、感謝の気持ちを忘れずにいてほしいと願っています。

未来へ:「愛」と「協力」を礎に

少子化や働き方改革などの影響により、団体を継続することが難しい時代を迎えています。一度失われた文化を復活させるのは、非常に困難であり、時間のかかることです。多くの諸先輩方が叡智を集め、汗を流して築き上げてこられた日本のマーチング文化を、決して絶やしてはならないと強く感じています。

困難な状況にある今だからこそ、マーチングに携わる仲間同士が互いに慈しみ合い、愛し続けられるよう、力を合わせていきたいと切に願います。集団で活動することで得られる共感の喜びや達成感、自己肯定感を、関わるすべての方が感じられるように、相互理解のもとで支え合いましょう。そして皆で叡智を結集し、この素晴らしいマーチングという文化を未来へ紡いでいきたいと思っています。

また、この大切な文化であるマーチングに関わるすべての皆様が、「想い」と「協力」を礎として、大きな輪でつながり合い、感性豊かな人格形成に欠かせない音楽を──マーチングを、カラーガードを、そしてマーチングパーカッションをはじめとするあらゆる分野をこれからも大切に育んでいってほしいと願っています。

以上で、お許しいただきました誌面も終了させていただくこととなりました。これまで私の拙い話にお付き合いくださり本当にありがとうございました。どれくらいの皆様にお読みいただき、共感いただけたかは分かりませんが、私の想いを少しでも感じ取っていただけたならうれしく思います。そして、今後とも温かく見守っていただければ幸いです。

最後に、この貴重な機会を与えてくださったマーチングナビの皆様、そしてこれまで私を支えてくださった全ての方々、マーチングを愛し、楽しく、真剣に活動されている皆様、そして何よりも、常に理解と応援をしてくれている妻に、心からの感謝を捧げて結びとさせていただきます。

皆様、どうぞこれからもマーチングを愛し、観て、演じて、心から楽しんでください。ありがとうございました。

著者プロフィール
竹村憲夫(たけむら のりお)

関東学院から日本ビューグルバンドに進み編曲・フォーメーションデザイン担当。宇都宮女子商業高において、全国大会13年連続金賞、ミスドリルチーム世界大会第二位を受賞。日本マーチングバンド協会の県、支部、全国大会などで審査員を務める。現在、一般社団法人日本マーチングバンド協会 理事長、日本マーチングバンド協会公認指導員、ドラムコージャパン公認ジャッジ。

keyboard_arrow_up

Pearl