青い帽子が青藍泰斗(現役9名+OB・OG9名の18名)、赤い帽子が奈良学(40名)
8月4日の組み合わせ抽選会で、青藍泰斗の甲子園初戦は大会5日目の8月9日第3試合に決まった。しかし、この時点で応援協力校はまだ決まっていなかった。顧問の大澤綾乃(おおさわ・あやの)先生を中心に協力校を募ったが、吹奏楽コンクールを控えていたこともあり調整は難航していた。取材の打ち合わせ中に相談を受けた本サイト記者が奈良学園大学マーチングバンド部の知念奈巳(ちねん・なみ)監督に事情を伝えたところ、「同じマーチング仲間が困っているなら」と直前にもかかわらず快諾を得た。こうして友情応援バンドが結成された。結成が決まったのは試合3日前の朝。青藍泰斗の応援団が甲子園に向けて出発したのは試合前日の夜で、合同練習の時間はなかった。
演奏曲はファンファーレを含む18曲。野球部からのリクエストに応えたラインナップで、『アフリカン・シンフォニー』『モンキーターン』といった定番から、オリジナルの『チャンス青藍』まで幅広く用意された。試合開始とともに野球部応援団の笠原佑太(かさはら・ゆうた)団長がリードを取り、友情応援バンドの演奏が響き渡った。奈良学のメンバーは初見演奏のため序盤はやや硬さがあったが、すぐに息が合い、音のまとまりを見せた。試合は青藍泰斗が初回に先制したこともあり、スタンドの空気は一気に高まった。
2年生でハイブラス(Tp,Mello)を担当する田澤水羽(たざわ・みはね)さんは、甲子園で奈良学と共演できたことが大きな刺激になったと話す。
田澤「日頃は大学生に限らず、他の団体の人と吹く機会がありません。そんな中で、自分の周りで聞いたことのないような音域で吹くトランペットの方々に囲まれて、すごく興奮しました。『来年もまた甲子園で演奏したい!』と思いましたし、野球部の皆さんにもぜひ頑張ってほしいです。楽譜を吹けることそのものも大事ですが、奈良学さんから“魅せる演奏”を学べたのも大きな収穫でした」
パーカッション担当の3年生・川﨑龍(かわさき・りょう)さんと、鈴木涼介(すずき・ りょうすけ)さんは、青藍泰斗で吹奏楽・マーチングを始めたものの、極小編成のためこれまで同じ楽器の「ライン」に加わった経験がなかった。
川﨑「日頃は編成上のバランスを考えて音量に気をつけて演奏してきましたが、今回の甲子園で奈良学さんと一緒に演奏することになって、初めて思い切りスネアを叩くことができました。叩いていて本当に気持ちよかったです。スネアラインのメンバーとして演奏するのも初めてで、楽しかったのはもちろんですが、人とズレている感覚を知ることもでき、大きな学びになりました」
鈴木「甲子園での演奏は本当に気持ちよかったです。普段とはまったく違う感覚で叩けたのが印象的でした。自分たちの演奏が応援の力になっている実感があり、野球部の後押しをできたと思います。甲子園での経験を糧に、高3最後の自分たちの大会も良いものにしたいです」
バリトン担当の高校3年生・廣瀬羽奈(ひろせ・はな)さんは、小編成ならではの助け合いやつながりの良さを語りつつ、奈良学との共演で大編成の魅力を実感したと話してくれた。
廣瀬「小編成はパートの垣根を超えて助け合える良さがありますが、今回奈良学さんと一緒に吹いて大編成の魅力も感じました。大学生の皆さんは技術も高く、とても刺激になりました。私は低音域担当なので甲子園という広い球場で自分の音が届いているか気になっていましたが、同じクラスの野球部の子に『ちゃんと聞こえたよ』と言われてすごくうれしかったです」