「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は山形県を拠点に活動する新進気鋭のバンド、『DER GLANZ』を紹介したい。日頃の活動や今後の展開について、代表の安達かほる(あだち・かほる)さんにお話を伺った。※取材日は2024年6月
【編集部より】2024年7月に東北地方において発生した集中豪雨災害により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回取材をさせていただいたDER GLANZが所在する山形県にも甚大な被害が発生しました。皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
団体正式名称:DER GLANZ(デアグランツ)
団体所在地:山形県天童市
創設年: 2018(平成30)年
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション(バッテリー+ピット)、カラーガード
※編成詳細は以下の通り
木管:Fl、Picc、Sax(Sop、Alto)
金管:Tp、Mello、Baritone、Tb、Euph、Tuba
活動理念:一日一生
DER GLANZは2018(平成30)年に結成された新進気鋭の一般団体だ。団体名はドイツ語で「輝き」を意味する。代表の安達さんは元々山形県内のバンドでマーチング活動を行っていたが、10名の有志の仲間と共に「山形県のマーチングシーンを盛り上げたい!」と自ら団体を立ち上げた。東北地区のマーチング活動は学校部活動がメインで、一般団体はそれほど多くない。特に日本海側の山形県や秋田県では限定的で、山形県はマーチング協会のフロア競技にエントリーしているのはDER GLANZのみである。そういったこともあり、発足初年度から30名ものメンバーが加入し、年々活動規模を拡大している。
安達:DER GLANZは『一日一生』をモットーに、今この瞬間の輝きを大切にしています。メンバーが輝くこと、そして私たちのショーを見てくれている人たちが輝くことを目指しています!
安達:私たちの活動内容の中に社会人野球の応援演奏があるんですが、これがなかなかメンバーに好評なんです。マーチングを知らない人たちがいるような別ジャンルの現場でマーチングをやるというのが楽しいんですよ。試合を観に来ているお客さんや、試合に出ている選手のみなさんやチーム関係者の方にもよろこんでいただいていて、マーチングの良さも知ってもらえるいい機会になっています。試合会場での演奏がきっかけで、先日はラジオ出演もしました。笑 選手の方々は「日頃応援してもらっているから、マーチングの大会のときは自分たちが応援しに行くよ!」なんて言ってくださっていて、同じ地域で活動する別のジャンルの方々とのつながりもありがたく感じています。
【速報投稿②】
〜感謝〜
DER GLANZ(デアグランツ)さま本日の優勝はデアグランツ様の応援演奏がチームを後押ししてくださいました。
球場に響き渡る演奏はB-net/yamagataはもちろん、球場に起こしくださった皆様の心を動かし、とても素晴らしい時間が展開されました。 pic.twitter.com/lFWijtDoQb
— 【公式】B-net/yamagata 社会人硬式野球クラブ (@bnet_yamagata) May 11, 2024
DER GLANZが応援協力を行っているのは、社会人野球の強豪として知られたきらやか銀行野球部OBが立ち上げた『B-net/yamagata(ビーネットやまがた)』。スポーツと音楽というジャンルは違えど、どちらも「好きな活動を続けたい、地域へ普及したい」という想いがあって設立された団体だっただけに、共感が縁を結んだ。大会以外の場でマーチング団体の活動を多くの方に観てもらえることは、マーチングの認知向上やファン拡大にもつながり、非常に重要な機会になっている。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週2回(土日)
安達:土曜日は夕方〜夜、日曜日は日中(午後)にそれぞれ約5時間の練習を行なっています。
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
山形県は盆地のため、夏は暑く冬は降雪が多い。そのため、年間でも屋外で練習できる期間は長くない。
安達:天童市内外の体育館で練習することが多いです。こちらの地域は車社会のため、ほとんどのメンバーが自家用車で練習に参加しています。車がない人もメンバー間で送迎するなどして、助け合いながら参加しています。
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.54名(2024年度)
安達:2024年度は過去最大メンバーで活動することになりました。昨年度は団体としてさまざまな大会やイベントに出演し、『DER GRANZ』という名前を知ってもらう機会が増えたことがメンバー増加の一番の要因だと考えています。また、団体独自の試みとして、2023(令和4)年から小学生以上から参加できるワークショップを行っています。マーチングを知らない人や初心者をターゲットとして、マーチングに触れる機会を増やしたいと考え企画しました。山形県内の小学校では多くの団体がマーチング活動をしていますが、中学校以降から活動する場が減ってしまいます。こうした機会をつくることで山形県内のマーチングの活性化を図っていきたいと考えています。
Q.所属メンバーの平均年齢を教えて下さい
A.25~28歳
安達:下は中学生から、上は60歳でチューバを担いで動き回っているメンバーがいます!親子で参加しているメンバーも3組います。
Q.所属メンバーの中で「一番多い」属性はどれですか?
A.社会人(フリーターを含む)
Q.所属メンバーの居住地について教えて下さい
A.団体所在地「内」の都道府県から通っている
メンバーの9割は山形県内在住者とのこと。残りの1割は「東北地方で木管編成のあるマーチングバンドが少ない」や、「居住地域の近くに団体がないなど」などの理由から宮城県や秋田県、新潟県から参加するメンバーもいる。また、山形県から神奈川県に転居したのちも継続して通っているメンバーもいるそうだ。
Q.年齢制限はありますか?
A.高校生以上(中学生から加入したい場合は要相談)
規約では高校生以上としているが、中学生からの参加も可能。ただし、保護者との相談や面談を複数回重ねた上で加入を検討している。
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)
大半のメンバーはマーチング経験者だが、初心者は一割程度とのこと。
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.加入した際に発生する費用については下記の通り
11〜15万円
DER GRANZの活動費は、県内メンバー6千円/月、学生・県外メンバー5千円/月のほか、管理費(大会参加費やスポーツ保険に使用)として、県内メンバー1万円、県外メンバー5千円を年1回支払う。また、新規入団時には入団費(公式のTシャツ代を含む)4千円が必要となる。その他、遠征費(東北大会のバス代や、合宿代など)が発生する。
衣装について、ブラスとバッテリーメンバーは入団時に購入(1万5千円)。状態が良い物に関しては退団時に団として買い取ることもある。それとは別で、衣装買い替えのための積立として年間5千円を徴収している。カラーガードの衣装は毎年制作をしており、団体から支給している(既製品を購入してリメイクすることや、業者へ依頼して制作するなど年度によって様々であるという)。
楽器については、ブラスは基本的に個人所有だが、貸与も可能(返却時に自費にてメンテナンス代を負担)。パーカッションは団体所有のものを使用するが、スティック、マレットは個人購入となる。カラーガードは、練習用フラッグとポールの1セットは個人購入だが、本番用のフラッグなどは団から支給される。
Q.その他、活動参加に際し必要な条件があれば教えて下さい
A.特になし
Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・スポーツイベント(プロチーム主催ゲームのゲスト演奏など)
・演奏会などの自主公演
Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・マーチングバンド全国大会(M協主催)への出場
・自主事業(コンサートやイベントなど自ら企画し実施するもの)の開催
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.トラックが無いため大型楽器の運搬がとても大変です
安達:現在は練習のたびに楽器や機材を自家用車に分担して積み込みしています。大会はレンタカーか運送会社、もしくは自家用車に積み込んでいます。楽器運搬用のトラックを購入したいけれど、通年で車両費と燃料費がかなりかかるので、なかなか難しいです。
7月の14.15日はドリル強化合宿でした!🏃♂️
暑い中でしたが、みんな最後まで頑張りました✊🏻🔥 ̖́-
これで今年のショーもやっとスタートライン!!
皆さんにお披露目できる日が今から楽しみです🌈💜どんなシーズンになるのか、ワクワク!!! pic.twitter.com/hBhBrnX1i8
— DER GLANZ (@DER_GLANZ2018) July 17, 2024
DER GLANZの発足時からのメンバーで、アレンジャー兼ブラス(Tuba)プレイヤーとして活動する須藤真(すとう・まこと)さんからはこのようなコメントも。
須藤:山形県内は年々団体数が減っていて、将来的に不安があります。そんな中発足したDER GLANZは、中学生から60歳までが参加する団体で、メンバーの年齢の幅が広いことが特徴の一つです。幅広い世代で活動できることは意義があります。また、子連れでの練習参加もOKなので、これからも様々な方に参加していただけたらと思っています。
代表の安達さんは、「日本全国の団体やプレーヤーの方々と友達になりたいですね」と話す。
安達:東北以外の地区で大会やイベント出演の際は応援に行ける人が少ないので、大会やイベントで見かけたときには、どうぞご遠慮なく大きな声援をお願いします。大会会場で見かけた際は気軽に声を掛けてください。日本中にマーチング仲間を作りたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします!
DER GLANZは2024年8月8日(木)の第31回天童夏祭りパレード出演が予定されているので、近隣地区の方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。また、大会会場で見かけた際はぜひ声援を送ってあげてほしい。
「DER GLANZ」
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