【マーチングバンド解体新書】地域の宝として地元民から愛される存在「横浜市立太尾小学校マーチングバンド」

「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。

今回紹介するのは、全国大会の常連校として知られる『横浜市立太尾小学校マーチングバンド』だ。高い実力だけでなく、地元の皆さんからも愛される存在である。日頃の活動などについて、館雅之(やかた・まさゆき)校長と指導者の佐藤衣織(さとう・いおり)先生からお話を伺った。

マーチングバンド解体新書 過去記事はこちら

 

横浜市立太尾小学校マーチングバンドについて

団体正式名称:横浜市立太尾小学校マーチングバンド(ヨコハマシリツフトオショウガッコウマーチングバンド)
団体所在地:神奈川県横浜市港北区
創設年: 1979(昭和54)年に太尾小学校鼓笛隊としてスタートし、1987(昭和62)年から太尾小学校マーチングバンドとして発足
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション(バッテリー、フロントピット)、カラーガード
※ 編成詳細は以下の通り
金管:Cort、Mello、F.Hr、Tb、Euph、Tuba
活動理念:地域に愛されるバンド、音楽で繋いだバトンを未来へ

太尾小学校は、東急東横線の大倉山駅や横浜市営地下鉄の新羽駅から徒歩10分程の住宅街の中にある。横浜アリーナまで車で約15分ほどだ。児童数は710人で、マーチングバンドの他に陸上やサッカーに取り組む児童も多い。

マーチングバンドの歴史は古く、1979(昭和54)年に『太尾小学校鼓笛隊』としてスタート、1987(昭和62)年から現在の『太尾小学校マーチングバンド』として発足した。親子二世代で参加しているという例も少なくないとのこと。それもあってか、保護者会のバックアップ体制も強固だという。

 

他の団体にはない「太尾小ならでは」なエピソード

昨今の練習場所事情は深刻で、特に騒音問題は避けては通れない課題だ。しかし、太尾小の場合はちょっと様子が違う。

佐藤:「校庭で練習をしているため、演奏を聞いてファンになってくださる地域の方が大勢いらっしゃいます。練習をしていると、門の外から見学されている方がいらっしゃったり、大会の前になると、近所の方から差し入れをいただくこともあります」

以前には騒音について意見もあったそうだが、近隣住民や自治体、商店街との関係性を地道に構築してきた結果、太尾小は地域から応援されるバンドとして信頼を得られるようになった。

校長:「近隣の方には毎月マーチングバンド練習のお知らせのお手紙を出しています。公立学校なので、地域の中で支援を受けて活動できているという側面が大きいです。自治会や町内会、近隣の商店街なども応援してくださって、ポスターの掲示などにも協力的です。地元のみなさんは『太尾小のマーチングバンドは地域の宝だ』と言って応援してくださっています」

ただ上手い・強いだけでは「地域の宝」として愛され応援されるには足らないはずだ。挨拶や受け答え、生活態度などにも子どもならではの自覚があるからこそ応援されている。

 

関係者が答えます!活動状況Q&A

1.練習について

Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週3回以上

佐藤:「部活動ガイドラインに則り、平日の放課後(月・水・金曜)2時間程度と、土曜は3時間程度練習を行っています」

Q.練習場所はどんな場所?
A.屋外

 

2.メンバーについて

Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.65名

 

3.実際に加入するためには

Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験も可)

パート決めについては、子どもたちの希望も聞いた上で、適性や編成状況を鑑みて大人が決めているとのこと。メンバーとして活動できるのは、太尾小学校に在籍する3〜6年生だが、場合によってはそれ以下の学年が参加することもあるそうだ。

Q.その他、活動に際し必要な条件はありますか?
A.学校の約束をしっかり守って生活ができていること

Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.~10万円

活動費用は月3,800円/12ヶ月に加え、衣装と楽器の積立用として年間3千円が発生する。また、遠征費や外部の体育館などを利用する際のバス代、体育館費用は都度徴収とのこと。
ブラスとドラムの衣装は無償レンタルで、楽器も無償貸出をしているが、自前楽器の利用も可能だ。また、カラーガードはパートとして常設されて2年目だが、衣装はその年のショーにあわせて制作しており、手具等は無償貸出となっている。

※取材時(令和5年度)現在

 

日頃の活動や今後について聞いてみました

Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・JAPAN CUP
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・演奏会などの自主公演

現在は大会へ向けての練習に励んでいるが、地域の商店街のパレードや、毎年年度末に行われる演奏会も大切な本番行事として取り組んでいる。また、横浜市立学校総合文化祭の一環として開催される『横浜市小学校マーチングバンド交流会』にも出演予定だ。

コロナ前は横浜F・マリノス公式戦やラグビーワールドカップ2019(ラグビーW杯)などでも演奏出演もあったが、コロナ禍以降は機会が減少してしまったとのこと。

Q.コロナ禍で困ったことは何ですか?
A.
・スケジュールが立てられない(練習予定、大会参加など)
・人前で演奏演技を披露する機会が減った、またはなくなった(大会を含む)
・練習回数や大会の減少による影響で演奏演技の技術が低下した
・メンバーのモチベーション維持

今年は3年生がたくさん入部したそうで、メンバーの半分近くがルーキーとのこと。また、現在参加しているメンバーやその保護者は「コロナ禍以前の盛り上がり」を知らない世代。2023年開催大会ではコロナ禍以前のような賑わいが戻ってきているため、開催規模も歓声も大きくなっている。「無言で拍手するだけ」というこれまでとは違う様子への戸惑いも見られるというが、関東大会では大歓声を味方につけて素晴らしいパフォーマンスを披露してくれることを期待したい。

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