
「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回は 、第53回関西マーチングコンテスト(関西吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)において、金賞と全国大会出場権を手にした『大阪市立堀江中学校吹奏楽部』を紹介する。亡き恩師との約束である「三年連続全国大会で金賞受賞と日本一」を目指し練習に励んでいる部の様子について、顧問の米澤世結(よねざわ・せゆ)先生からお話を伺った。

団体正式名称:大阪市立堀江中学校吹奏楽部(オオサカシリツホリエチュウガッコウスイソウガクブ)
団体所在地:大阪府大阪市西区
創設年:不明
団体の編成:ブラス(※)、パーカッション
※吹奏楽時の編成は、
金管:Tp,Hr,Tb,Euph,Tuba
木管:Cl(Es,♭B,Bass),Fg,Ob,Fl,Picc,Sax(Alto,Tenor,Bari)
弦楽器:Cb
マーチング活動時は、
金管:Tp,Hr,Tb,Euph,Tuba
木管:Cl(Es,♭B,Bass),Fg,Ob,Fl,Picc,Sax(Alto,Tenor,Bari)
活動理念:感謝と謙虚な心
大阪市立堀江中学校は、1959(昭和34)年に大阪市立花乃井中学校の分校から分離開校した公立中学校で、吹奏楽部をはじめ、部活動が盛んである。学区域の開発が進み、小学校の児童数が急増したことなどもあり、2022(令和4)年に現在の所在地である大阪市立西高等学校跡地へ移転した。ちなみに2025(令和7)年度現在、1学年が9クラス、2学年が8クラス、3学年が7クラスあるマンモス校だ。
吹奏楽部は以前は座奏中心の活動を行っていたが、前顧問の谷本卓(たにもと・たかし)先生が率いた7年間はマーチング活動にも積極的に取り組んだ。座奏とマーチングの両立は容易ではないが、谷本先生は「マーチング活動は人間力の育成に繋がる。座奏だけでは気付けないところをマーチングで培える」と提唱し、活動を促したという。2023(令和5)年11月に大阪城ホールで開催された「第36回全日本マーチングコンテスト(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)」においては、関西代表として出場し、満点の金賞を受賞して日本一に輝いた実績を持つ実力校である。

堀江中学校は大阪市立西高等学校の跡地に移転したことから、地上7階建てプラス地下1階という、公立中学校としては規格外の規模の設備を有している。
米澤:吹奏楽部は地下1階を練習拠点としています。マーチングの練習場所としては広さ等不十分ですが、少なくとも音作りに関しては、完全防音とまではいかずとも環境に恵まれていると思います。
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.週3日以上(平日放課後など)※大阪市部活動指針に則り実施
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
米澤:音は地下で、マーチングの練習はグラウンドや外部の体育館を使用することがあります。
Q.所属メンバーの居住地について
A.堀江中学校区
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.75名(2025年度)
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.行わない(未経験者が多い)
米澤:学区内の小学校に鼓笛隊があるため経験者もいますが、それでも約1割程度で、ほぼ全員が初心者として入部します。

Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・全日本吹奏楽連盟(吹連)主催大会
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・演奏会などの自主公演
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.マーチングでの練習場所がない・見つからない
米澤:マーチングの練習場所確保が課題です。学校のグラウンドは日頃陸上部と野球部が半分ずつ使用しているため、吹奏楽部も利用するとなるとその中に割って入る形になるためです。大会前は外部の体育館などを借りることもありますが、音の問題などでマーチング利用ができないことも多々あります。
堀江中学校吹奏楽部は、11月22日(土)に大阪城ホールにて開催される「第38回全日本マーチングコンテスト(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)」に関西代表として出場する。前顧問の谷本先生は以前より患っていた病気のため、今年度に入ってから入退院を繰り返すようになり、生徒たちも状況を理解しながら練習に取り組んでいたという。
米澤:谷本先生のことで生徒たちは不安な気持ちもあったかもしれませんが、そんな中でも前向きに練習しようと努めていました。また、以前に比べて、部員同士で意見を出し合ったり、課題に率先して取り組む姿勢が多く見られるようになり、自立心と責任感が芽生えたように感じます。
そんな中、9月初旬に谷本先生が亡くなられた。マーチングコンテスト大阪府大会の直前の出来事だったため、生徒たちは大会本番後に通夜へ向かったそうだ。その後、9月下旬に開催された関西大会において、金賞を獲得し、見事全国大会への切符をつかんだ。
米澤:「三年連続全国大会で金賞受賞。そして日本一をとること」は谷本先生と私たちの最後の約束なんです。全国大会出場は達成できたので、あとは金賞受賞を目指して練習に励むのみです。堀江中のマーチングの特色は、座奏で鍛えたサウンドをそのままにマーチングへ活かすことなので、大会ではそこに注目して頂けたらと思います。
生徒たちは、亡き恩師との約束を胸に日々音と向き合い、仲間とともに音楽の力を信じて歩み続けている。その姿は、マーチングがただの競技ではなく、絆や成長を育む文化であることを改めて感じさせてくれる。大阪城ホールで彼らがどんなパフォーマンスを披露してくれるのか、楽しみである。