「知ってるようで知らないマーチングバンド、ドラムコーの現状」を団体関係者に直接インタビューし、正しい情報を広く詳しく発信する【マーチングバンド解体新書】シリーズ。
今回ご紹介するのは、カラーガードチームの『15ichie』。2024(令和6)年4月には二度目のWGI(Winter Guard International)World Championshipsに挑み、マーチング界隈で話題となった。代表の近藤志保(こんどう・しほ)さんから、日頃の活動や今後の展開、WGI挑戦の記録などのお話を伺った。
Photo by Rio Kondo
団体正式名称:15ichie(一期一会・イチゴイチエ)
団体所在地:神奈川県横浜市
創設年:2010(平成22)年
団体の編成:カラーガード
活動理念:踊ることを諦めるのではなく、楽しみながら踊り続けよう!
団体発足のきっかけとなったのは、DCJ(Drum Corps Japan)I&Eとのこと。近藤さんをはじめとしたYokohama INSPIRES Drum&Bugle CorpsのカラーガードOB・OGの有志4名が集まり、「久しぶりにカラーガードのアンサンブル大会に出てみよう」と言う話から結成に至った。当初から他のカラーガードチームよりも平均年齢は高めではあったが、その分経験や実績も豊富なメンバーが集まった。活動理念に「踊ることを諦めるのではなく、楽しみながら踊り続けよう!」とあるように、踊ること・カラーガードを生きがいとして続けたいという志を持ったメンバーたちで活動を続けている。
Photo by Sayaka Tanaka
日本国内には多くのカラーガードチームが存在するが、WGIの現地大会に出場しているのは、新型コロナウイルス感染症以降は、2024(令和6)年4月の15ichieのみである。
15ichieが初めてWGIに挑戦したのは、2019(令和元)年のこと。その前年の『第1回カラーガード・マーチングパーカッション全国大会』が『WGI Sport of the Arts Japan』として開催され、15ichieもエントリーしていた。チーム内で「やはり本場の大会(WGI)に出たい」という機運が高まり、そこから一年以上の準備期間を経て、Independent Open部門で出場を果たした。二度目の挑戦となった今年はバーチャル大会を経ての本戦大会への出場で、A Class部門での出場となった。
Photo by Sayaka Tanaka
近藤:前回は惜しくも予選敗退でしたが、今回はたくさんの方に観ていただくためにもファイナリスト(決勝進出)を目指し、前回出場したときのスコアを参考にショーの分析をして、個々のメンバーのスキルや振付の難易度もレベルアップさせ努力を重ねてきました。様々な面において2年間かけて準備をしていましたが、円安が急激に進み渡米できるか不安になりました。そこで、クラウドファウンディングを活用させて頂いたところ、多くの方々からご支援を頂き、手具の輸送費・現地でのレンタカー費用・使用音源の海外用許諾・プロップ制作費などに充てさせて頂く事ができました。
そのお陰で予選を通過し、セミファイナル出場を果たす事ができました。
大会会場では、現地の学校団体がサポートに回ってくれたそうだ。WGIでは、エントリーが決まるとタイムテーブルに合わせてリハーサル会場がWGI側から割り振られ、随時通達される。そのため、移動等の搬入出時に負担が大きい団体や、遠方から参加する団体は、オンラインコミュニティ上で現地サポートを募ることも珍しくない(そういった相互扶助システムが構築されているのもWGIの良い点である)。本戦まで出られなかったカラーガードチームのメンバーなどがサポートし合うケースが多いため、毎回固定の人員ということはないが、セミファイナル(準決勝)の時には偶然前回と同じ団体で、理解もあり手際よく対応してくれたそうだ。
近藤:今回のショー「Pray for the world」〜The miracle pine tree〜は、奇跡の一本松の存在を伝えることで世界に希望を届けたいという思いと、被災地の復興支援の一助となればという思いを込めて制作にあたりました。SENDAI VERDURESの友人に震災当時の話を聞かせてもらったのですが、みなさんからは「被災したときに助けてもらった」と、感謝の言葉がたくさん出てきました。そこで、すでに作られていたショー音源に日本語で色々な人の「ありがとう」の声を入れることにしました。声の出演はVERDURESや、ご家族にもご協力いただきました。現地アメリカでの反響は予想以上で、涙を流して感動する人や、話題を聞きつけて遠方から何時間も掛けて見に来てくれた人などもいました。これも東北との縁もあってのことです。みんなの思いを込めたショーを世界に発信できて良かったと思っています。
今回の15ichieの挑戦は、一つの団体の参戦経験としてだけでなく、日本のカラーガード団体がWGIへ挑戦する際の道を拓いたものでもあると感じられた。もし今後WGIに挑戦してみたいと考えているカラーガードチームがあれば、ぜひコンタクトを取ってみてはどうだろうか。
Photo by Sayaka Tanaka
Q.全体練習の頻度はどれくらい?
A.月2回程度(基本的に基本隔週の週末、大会前などは変動あり)
Q.練習場所はどんな場所?
A.屋内
Photo by Sayaka Tanaka
Q.現在所属しているメンバーは何名いますか?
A.2023年(令和5)度は13名
Q.所属メンバーの平均年齢を教えて下さい
A.38才
近藤:高校生1年生の17才(中3から在籍しているメンバー)から53才までが活動しています。平均年齢だけは、ダントツで日本一です!
Q.所属メンバーの中で「一番多い」属性はどれですか?
A.社会人(フリーターを含む)
Q.所属メンバーの居住地について教えて下さい
A.団体所在地「外」の都道府県から通っている
近藤:現在は、神奈川県、千葉県、東京都、静岡県(浜松市)から参加するメンバーがいます。以前は埼玉県や、遠くは沖縄県からも参加するメンバーもいました。
Photo by Sayaka Tanaka
Q.年齢制限はありますか?
A.なし
近藤:以前は30歳以上としていましたが、現在は制限を設けていません。
Q.加入に際してオーディションを行っていますか?
A.状況に応じて行なっている(パートや応募状況など)
近藤:カラーガード経験者はもちろん、ダンスやバトン経験のある人は加入できます。完全な初心者の方は、『15Family(イチゴファミリー)』という期間限定メンバーとして、練習をはじめクリスマスイベントなどのイベントに参加していただくことができます。
Q.一年間でメンバーが団体に支払う費用は概算でどれくらい?
A.加入した際に発生する費用については下記の通り
15ichieの活動費用は、5千円/月(3ヶ月ごとに納入)。衣装は個人購入、手具は原則個人購入となる。このほか、合宿や大会などの際の遠征費用(活動状況により変動あり)が発生する。
Q.その他、活動参加に際し必要な条件があれば教えて下さい
A.楽しく踊り続ける事を志しとしているので、メンバーと良好な関係を築ける事。
それぞれ参加状況が異なる事を理解しつつ、チームの活動にベストを尽くせる事。
Photo by Sayaka Tanaka
Q.普段、どのような本番に参加していますか?
A.
・日本マーチングバンド協会(M協)主催大会
・Drum Corps Japan(DCJ)主催大会 ※WGJ、I&Eを含む
・地域イベント(地元のお祭りなど)
・その他:WGI
Q.将来的に挑戦したい(または現在企画している)ものがあれば教えてください
A.
・DCIやWGIなど、海外で開催される大会への参加
・テーマパークやスポーツイベントなどへの出演
・自主事業(コンサートやイベントなど自ら企画し実施するもの)の開催
今後もWGIへの挑戦は継続して行っていきたいとのこと。近藤さんは自身の経験も踏まえ、「オーディションやリハーサルのために何度も渡米したり、長期で現地に滞在すると負担がとても大きい。日本での生活を維持しながら、日本の団体としてWGIへ出られるといいなと思っている」と話していた。
Q.いま一番困っていることは何ですか
A.練習場所がない・見つからない
Photo by Rio Kondo
15ichieの活動はまさに大人の青春といった感じで、「今日が一番若い日」という言葉があるが、それを体現している。いくつになっても、いくつであっても好きなことに挑めること、共に挑める仲間がいることは人生を豊かにする。現にメンバーの表情は本当に豊かだ。また、WGIというトップオブトップに挑みながらも、初心者も受け入れてくれるのが15ichieの良いところでもある。経験者の方も、もし興味があれば思い切って連絡してみてはいかがだろうか。
Photo by Erika Muramawa
「15ichie」